英国のハント財務相は22日、秋季予算案を発表した。財政にゆとりが生じたことを受け、減税や就労支援策により経済成長を促す一方、支出は引き続き引き締める方針を打ち出している。
同相は、政府は経済の立て直しに向け「困難な決断を下してきた」とした上で、「仕事が終わったわけではない」と強調。今回の予算では政府支出を拡大せず、高税率も避ける一方で、減税や「勤労に報いる」措置など、110件の「成長支援策」を盛り込んだとしている。
■減税
国民保険の保険料率を12%から10%に引き下げる。個人事業主が支払う第2種保険料は廃止し、同じく個人事業主が支払う第4種の保険料率を9%から8%に引き下げる。設備投資の全額を税控除の対象とする措置は、2025年度末までの予定だったが、これを恒久的措置とする。小売り・飲食・娯楽向けの事業税の割引きは1年延長する。
■就労の奨励
法定最低賃金である「全国生活賃金」を時給10.42ポンドから11.44ポンドに引き上げ、対象年齢を現行の23歳以上から21歳以上とする。長期の失業者や病休者の就業支援に今後5年で25億ポンドを投じる。一方、コロナ禍以降に在宅勤務が拡大したこと受け、病休者の生活保護審査を厳格化する。
■企業支援
高成長産業の国内生産支援に向け、45億ポンドを拠出する。このうち9億6,000万ポンドはクリーンエネルギー事業に振り向ける。マンチェスターなど3カ所に先進製造業投資ゾーンを新設し、計34億ポンドの民間投資を誘致する。人工知能(AI)開発支援には今後2年で5億ポンドを投じる。
■アルコール・たばこ税
アルコール税は凍結。手巻きたばこの税率は、インフレ率プラス12ポイントの割合で引き上げられる。
■インフラ
送電塔や送電設備の増設に向け、近隣住民の電気料金を10年間にわたり1世帯当たり最大1,000ポンド減額する。
■成長率見通し
予算責任局(OBR)はこの日、今年の国内総生産(GDP)が前年比0.6%拡大するとの見方を示した。来年は0.7%拡大し、25年には1.4%増に成長が加速すると見込んでいる。今年のインフレ率見通しは7.5%と、昨年の9.1%から減速する見通し。来年には3.6%へと大きく減速し、25年には1.8%と、中銀イングランド銀行が目標とする2%を下回るとみている。
財政赤字額を示す公共部門純借入額(PSNB)は、23/24年度は対GDP比で4.5%となり、24/25年度には3%、25/26年度には2.7%に縮小するとみている。公的債務残高は、23/24年度には対GDP比で91.6%となり、24/25年度は92.7%、25/26年度は93.2%にやや増えると予想している。[労務]
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