英シンクタンクの国立経済社会研究所(NIESR)は9日、英国経済が「失われた5年」に突入しているとの見解を明らかにした。ロシアによるウクライナ侵攻などの影響で景気が低迷する中、低所得世代が大きな打撃を受けるとの見方で、経済格差のさらなる拡大に警鐘を鳴らした。
NIESRは低迷の要因として、ウクライナ侵攻に加え、欧州連合(EU)離脱、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)、インフレ抑制への金融引き締めが「大きな影響を与えている」と指摘。今年第1四半期(1~3月)の国内総生産(GDP)はコロナ禍前と比較し0.5%縮小しており、こうした低迷が来年第3四半期まで続くと見込んでいる。
年内に景気後退入りを免れるとの見通しは維持したが、今年のGDP成長率は0.4%、来年は0.3%にとどまると予想。ただ、先行きは不透明で、年末までに経済縮小の懸念があるほか、来年末にリセッション入りするリスクが約6割あるとの見方を示した。
NIESRは、来年にかけ多くの世帯では実質所得がほとんど伸びず、住宅やエネルギー、食品の価格上昇に対処するため負債が拡大すると予想する。24年までの5年間で、所得分布の下位50%世帯では実質可処分所得が17%減少する一方、最富裕層では5%の落ち込みとなる見込みだ。
インフレ率については、英中銀イングランド銀行による金融引き締めの効果が表れ始めることで、今年末までに5.2%、来年末までに3.9%に減速すると予想。25年は平均2.3%で推移するが、依然として中銀目標の2%を上回ると見込んでいる。
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