グリーン経済への移行は英国経済に年間710億ポンドの粗付加価値(GVA)をもたらし、地域間の格差解消にもつながる――。英非営利団体エネルギー・クライメート・インテリジェンス・ユニット(ECIU)が、1月31日公表した最新報告書でこうした見方を明らかにした。
この報告書は英産業連盟(CBI)が委託を受けてまとめたもので、炭素排出量の実質ゼロを目指す「ネットゼロ」経済の規模と、地理的な集中度を分析している。
それによると、ネットゼロ経済への移行により生み出される付加価値はエネルギー部門の2倍に上る。また移行に関与する企業は2万社を超え、84万人の雇用を支えている。これら企業の従業員1人当たりのGVAは11万2,300ポンドと英国平均の1.7倍で、生産性も高い。さらに、平均賃金は4万2,600ポンドと英国平均の3万3,400ポンドを大きく上回った。
一方、ネットゼロ経済への移行に関連したビジネスが集中する地域は、スコットランド、イングランド北東部タインサイド、ハンバーサイド、北西部マージーサイドなどで、ロンドンやイングランド南東部に比べて地域経済の成長への貢献度も大きい。
報告書は、ネットゼロ経済への移行により、工業の衰退で経済が悪化した地域の再活性化や英経済の生産性向上が見込めると説明。一方で、グリーン技術などへの投資拡大で世界的な競争が始まっているとも指摘する。
競争激化に関しては、米国のインフレ抑制法(IRA)への懸念がある。同法では気候変動対策分野で3,690億ドルの支援が予定されている。与党・保守党議員で先にネットゼロに関する報告書をまとめたクリス・スキッドモア氏はこれについて、「英国は後れをとっている」と述べた。また最大野党・労働党や産業界からも、政府に対してIRAに対抗できる支援策を求める声が出ている。[環境ニュース]
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