米国のエネルギー情報局(EIA)は28日、欧州の液化天然ガス(LNG)輸入能力が2024年までに対21年比で34%拡大するとの見通しを示した。ロシア産ガスのパイプライン経由での供給が減る中、各国がLNGの輸入受け入れに向け再ガス化施設の建設を急いでいることが背景にある。
欧州連合(EU)加盟27カ国と英国の再ガス化施設の容量は、過去10年で日量約7,930万立方メートル(16%)増にとどまっていたが、来年末には21年比で日量1億5,000万立方メートル拡大し、24年末までにはさらに日量4,250万立方メートル増える見通し。
中でも、オランダとポーランド、フィンランド、イタリア、ドイツの5カ国では、今年に入り合わせて日量4,815万立方メートル相当の再ガス化能力が追加された。プロジェクトの多くは、浮体式LNG貯蔵再ガス化設備(FSRU)と陸上パイプラインの設置や、既存施設の容量拡大のため、工期が比較的短くて済むという。
23年末までには、ドイツの3カ所やフィンランド、イタリアで新規FSRUが稼働を開始する予定のほか、フランスとギリシャはFSRU船の導入を、ポーランドは既存の再ガス化設備の容量拡大を予定している。これにより、LNG輸入能力は合わせて日量9,911万立方メートル増加する見通しだ。
■ロシア産LNGの輸入が拡大
28日付フィナンシャル・タイムズによると、欧州のロシア産LNGの輸入量は今年1~10月に前年同期比40%超拡大した。ロシア産ガスのパイプライン経由での供給が減る一方で、タンカーでの輸入は拡大している格好で、欧州がロシア依存から脱し切れていない現実が浮き彫りとなっている。
1~10月のLNG輸入量のうち、ロシア産LNGは178億立方メートルと、全体の16%を占めた。ロシアが欧州へのLNG輸出も制限すれば、欧州諸国は割高な代替調達を強いられ、エネルギー危機がさらに深刻化する恐れがある。
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