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英政府、秋季予算案発表 増税と歳出削減に方針転換

英国のハント財務相は17日、秋季予算案を発表した。財政安定化とインフレ対策に焦点を当て、税収を250億ポンド増やす一方、歳出は300億ポンド削減。トラス前政権が打ち出し、金融市場の混乱を招いた大型減税案から一転、緊縮方向にかじを切る。

同相は、英国経済が既にリセッション(景気後退)入りしており、来年の国内総生産(GDP)は縮小する見通しだと指摘。安定と成長、公共サービスを優先課題とし、「公平な解決策」を提供するため「難しい決断」を下したとしている。

■税金

所得税と相続税、国民保険料の制度基準を2028年4月まで凍結する。15万ポンドを超える所得に課される45%の課税区分については、対象所得を12万5,140ポンド超に引き下げ。配当とキャピタルゲインに対する課税の控除を引き下げる。

企業向けでは、エネルギー価格高騰の恩恵を受ける石油・ガス会社に課す超過利潤税の税率を現行の25%から35%に引き上げ、適用期間を28年3月まで延長。また、発電事業者に対する一時的な45%の課税を導入する。これにより140億ポンドの税収を確保できるという。

一方、事業税に絡み向こう5年間で136億ポンドの支援策を提供。70万社が恩恵を受ける。

■歳出削減と公共サービス

24/25年度までの歳出計画は維持するが、その後はペースを減速。実質的には拡大しながらも、300億ポンドの削減につなげる。

国民医療制度(NHS)イングランドへの拠出は向こう2年間、1年当たり33億ポンド拡大。介護部門では来年に10億ポンド、24年に17億ポンド増やす。学校への予算割り当ては向こう2年、年間23億ポンド増額する。

■生活費高騰対策

標準的な世帯で光熱費の上限を年間2,500ポンドに据え置く支援策は、23年4月から3,000ポンドに引き上げた上で12カ月継続。法定最低賃金の「全国生活賃金」については、23年4月から23歳以上の労働者の時給を10.42ポンドに引き上げ。社会保障の給付額は今年9月のインフレ率に沿って10.1%増やす。

■インフラ

向こう5年間で6,000億ポンドを投資。イングランド北部とロンドンを結ぶ高速鉄道「ハイスピード2(HS2)」計画や、リバプール―ヨーク間の新高速鉄道「ノーザン・パワーハウス・レール(NPR)」計画は維持する。

■成長率見通し

予算責任局(OBR)はこの日、今年のGDPが前年比4.2%拡大するとの見方を示し、3月時点の予測から0.4ポイント上方修正した。来年は1.4%縮小した後、24年には1.3%増に回復すると見込んでいる。今年のインフレ率見通しは9.1%で、来年には7.4%に減速するとみている。財政赤字額を示す公共部門純借入額(PSNB)は、21/22年度の1,333億ポンドから22/23年度は1,770億ポンドに増えると予測。対GDP比では、前年度の5.7%から22/23年度は7.1%に拡大するとみている。公的債務残高は、22/23年度には対GDP比で101.9%と、前年度の97.4%を上回り、来年度はさらに上昇して106.7%に達すると予想している。


関連国・地域: 英国
関連業種: マクロ・統計・その他経済

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