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大型減税の大部分撤回 新財務相、光熱費支援も期間短縮

英国のハント新財務相は17日、前任のクワーテング氏が打ち出した総額450億ポンド規模の大型減税の大部分を撤回すると発表した。これにより320億ポンドの税収減を回避できると強調している。金融市場の懸念を払拭し、混乱を食い止めるための緊急措置。併せて、エネルギー価格高騰を受けた家計・企業支援策の期間を短縮し、来年4月に見直す方針を示した。

クワーテング氏は9月、過去50年で最大となる大規模減税案を発表したが、大幅な借り入れ増が見込まれることや、予算責任局(OBR)による財政見通し報告が同時に行われなかったことから、金融市場が財政悪化を警戒。通貨ポンドの急落や市場金利の急騰を招き、与党・保守党内からもトラス政権への批判が高まった。これを受け、トラス首相は先に、クワーテング氏を急きょ解任し、ハント氏を後任に指名していた。

ハント氏は今回、クワーテング氏が取りやめるとしていた法人税増税を予定通り実施し、2023年4月に税率を19%から25%に引き上げる方針を示した。また、高所得者向けの最高税率を45%から40%に引き下げる案や、所得税の税率を現行の20%から19%に引き下げる案を撤回した。

一方、国民保険料の1.25パーセントポイントの引き上げを取りやめる案は維持し、予定通り11月から元に戻す。不動産価格25万ポンド分相当の印紙税を免除する措置や、住宅の一次取得者向けに42万5,000ポンド分相当の印紙税を免除する措置も予定通り実行する。

また、トラス首相は10月から向こう2年間、標準的な世帯で光熱費の上限を年間2,500ポンドに凍結し、超過分を政府が負担するとしていたが、ハント氏は今回、これを来年4月に打ち切り、その後はより的を絞り込んだ支援策を検討する方針を示した。

ハント財務相は10月31日に、今回の措置を含む中期財政計画をOBRの財政見通しと共に公表する予定。同相は「税金と支出の両面でさらに困難な決断を下すことになる」としている。民間シンクタンクの英財政研究所(IFS)は先に、英国の財政安定化には620億ポンドの歳出削減が必要になるとの見方を示している。

フィナンシャル・タイムズによると、市場は今回の措置を好感しており、30年物の国債利回りが0.42パーセントポイント低下したほか、ポンドの対ドル相場は1.3%上昇している。

ただトラス首相は、公約に掲げてきた大型減税の大部分の撤回を強いられた格好となる。英国財政への信用失墜や市場の混乱を招いた責任を追及する声も強く、保守党内からも辞任圧力が強まっている。


関連国・地域: 英国
関連業種: 金融電力・ガス・水道マクロ・統計・その他経済

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