英国のクワーテング財務相は23日、補正予算案を発表した。税制改革に焦点を当て、法人税の増税計画を撤回するほか、所得税の標準税率の引き下げ開始を前倒しし、最高税率も引き下げる。減税により「低迷の悪循環」を「成長の好循環」に変え、中期的に年率2.5%の経済成長を目指す。
所得税については、来年4月から標準税率を現行の20%から19%に引き下げる計画で、当初の予定から1年繰り上げた。これにより、3,100万人が年間170ポンドの恩恵を受けるという。また、15万ポンドを超える所得に課される45%の課税区分を来年度から廃止。最高税率は40%に下がる。
法人税に関しては、来年4月に現行の19%から25%に引き上げる予定だったが、これを取りやめ。年間190億ポンドが経済に還元されるとしている。
今年4月にジョンソン前政権が導入した国民保険料の1.25パーセントポイント引き上げについては、11月から元に戻す。不動産購入にかかる印紙税を引き下げるほか、銀行員の賞与に設ける予定だった上限も撤回した。福祉手当の給付制度「ユニバーサル・クレジット」の受給条件は厳格化する。
クワーテング氏はこのほか、国外からの旅行者に対する付加価値税(VAT)免除措置や、酒税の増税計画の撤回を発表。また、優遇税制を適用する投資ゾーンの設置検討や、インフラプロジェクトの迅速化に向けた欧州連合(EU)法に由来する法律の見直しを行う。頻発するストライキに対処するため、労働組合が提示された賃金条件の受け入れについて組合員の投票にかけることを義務付ける方針。
政府は先に、エネルギー価格高騰の影響を緩和するため、一般家庭と企業に対する支援策をそれぞれ発表。クワーテング氏は今回、この支援策に向こう6カ月で600億ポンドの費用がかかるとの見方を明らかにした。
今回の補正予算案により、トラス首相が与党・保守党の党首選で公約した減税が実現される。だが野党からは、高所得者層を優遇する税制改革や、借り入れ拡大に対し批判が噴出している。
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