英国の与党・保守党の党首選で決選投票に臨むスナク前財務相は1日、所得税減税を新たな公約として打ち出した。2029年までに基礎税率を現行の20%から16%に引き下げる方針。大型減税を公約に掲げるライバル候補のトラス外相に対抗し、一般党員からの支持率で巻き返しを狙う。
スナク氏は今年3月の春季財政報告で、24年に所得税の基礎税率を現行の20%から19%に引き下げる方針を示していた。同氏は今回、これに追加で29年までに基礎税率をさらに3ポイント引き下げると発表。実現すれば過去30年で最大規模の所得税減税になるとしている。
トラス外相はかねて、首相に就任すれば直ちに300億ポンド規模の大型減税に着手すると公約。4月に実施された国民保険料率の引き上げや、今後に予定される法人税の引き上げを撤回すると共に、エネルギー料金に上乗せされるグリーン賦課金を一時停止するとしている。
スナク氏は当初、借り入れに基づく性急な減税はインフレを過熱させるとしてこれを批判し、大規模減税には消極的だった。しかし、一般党員の間での支持獲得に苦戦し、トラス氏の勝利が濃厚視されるようになる中、徐々に方針を転換。先にはエネルギー料金の付加価値税(VAT)を引き下げることも公約として打ち出していた。
スナク氏は今回、所得税減税はインフレの過熱を避ける形で進めると強調。まず22年にエネルギー料金のVAT減税を実施し、23年に生産性改善と投資拡大に向けた法人税改革を進めた上で、24年には予定通り所得税減税に着手するとしている。フィナンシャル・タイムズによると、スナク陣営は国内経済が24年以降に予算責任局(OBR)の予測通りに伸びれば、追加の所得税減税は賄えると見込んでいる。
決選投票は、全国の保守党党員約16万人によって行われ、9月5日に新党首が発表される。
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