ドイツの連立政権は30日、最大野党の中道右派・キリスト教民主同盟(CDU)および姉妹政党のキリスト教社会同盟(CSU)の保守連合と、国防費向けに1,000億ユーロの特別基金を設置することで合意した。ロシアによるウクライナ侵攻を受けた措置で、国防費を国内総生産(GDP)の2%に拡大する狙い。
ドイチェ・ウェレによると、同基金は借入金を財源とする。憲法では借り入れの上限が定められているため、基金の設置に向けてはこれを上限の適用外とする必要がある。憲法改正には議会で議席の3分の2以上の賛成が必要となるため、政府はCDU・CSUとの事前合意を目指していた。
ショルツ首相は今回の合意について、「ドイツと欧州の安全保障のための極めて大きな一歩」と評価。「これにより、国防省はこれまで以上に防衛の任務を遂行できる」としている。また、ランブレヒト国防相もこれを歓迎し、夏季休暇までにこの基金を法制化する方針を示した。
連立政権とCDU・CSUは、同基金により2026年末までの国防費を補う方針。ただ、その後も北大西洋条約機構(NATO)が必要と見なす水準の国防費を維持するとしている。両者はこのほか、軍事機器の調達手続きの迅速化や、政府予算によるサイバーセキュリティーの強化などでも合意した。
ショルツ氏は、ロシアがウクライナに侵攻した直後の3月上旬、22年度予算で連邦軍に1,000億ユーロを拠出し、国防費をGDP比で2%に拡大する方針を打ち出していた。NATOは加盟国の国防予算について、対GDP比2%とする目標を掲げる。ただドイツは第2次世界大戦の歴史的経緯や根強い平和主義を背景に、毎年1.5%程度にとどまっていた。
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