英国政府は10日、ロシアのウクライナ侵攻を受けた経済制裁を強化し、ロシア新興財閥オルガリヒの7人を新たに制裁対象に指定したと発表した。サッカーの英イングランド・プレミアリーグに所属するチェルシーのオーナーで実業家のロマン・アブラモビッチ氏や、ロシアの国営石油大手ロスネフチのイゴール・セチン最高経営責任者(CEO)などが含まれている。
新たに制裁対象となったのは両氏のほか、◇コングロマリット(複合企業)En+(エンプラス)グループのオレグ・デリパスカCEO◇国営銀行VTBのアンドレイ・コスティン会長◇天然ガス世界最大手ガスプロムのアレクセイ・ミラーCEO◇国営パイプライン運営会社トランスネフチのニコライ・トカレフ社長◇金融大手バンク・ロシアのディミトリ・レべデフ会長――の計7人。
これら7人は、英国内の資産が凍結されるほか、英国への渡航が禁止される。政府はこれらの人物について「ロシアで最も富裕で影響力の大きい新興財閥のうちの7人で、事業、資産、人脈の各面でロシア政府と密接な関わりを持つ」と説明している。凍結する7人の資産は総額150億ポンドに上るという。
ロイター通信によると、ロシアのウクライナ侵攻を受けて英国が制裁を科したロシアの個人は、今回の追加も含めて約20人となった。一方、欧州連合(EU)は既に862人を制裁対象としている。
■チェルシーは試合継続
英政府は併せて、アブラモビッチ氏が所有するチェルシーに活動継続のためのライセンスを交付すると発表した。チケット購入者や他のクラブに影響が及ばないよう、既に予定が組まれている試合への出場を認めると共に、従業員の賃金や運営コストの支払いも許可する。
アブラモビッチ氏は、ロシアのプーチン大統領と近い関係にあるとされることから批判が高まっており、先にはチェルシーを売却する方針を示していたものの、まだ買い手は決まっていない。同氏は2003年に同クラブを買収。チェルシーは、同氏の資金力を背景に戦力を強化し、プレミアリーグで優勝を重ねた。2月には国際サッカー連盟(FIFA)クラブワールドカップ(W杯)で優勝し、初の世界一に輝いたばかりだった。
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