ロシア軍のウクライナ侵攻を受けて英政府と米政府は8日、ロシア産原油の輸入を禁止する追加制裁を発表した。英国は年内に段階的に輸入を停止する。米国は即日で停止し、原油のほかロシア産の液化天然ガス(LNG)と石炭も対象としている。欧州連合(EU)はこれに追随しないものの、ロシア産天然ガスの輸入量を年内に3分の2削減する計画を明らかにしている。
英政府は輸入の段階的停止を直ちに実施せず、サプライチェーン(調達・供給網)を調整するための時間を確保する。新たに「石油タスクフォース」を設置し、これを通じて関係企業と協力し、代替供給先を見つけるよう支援していく。ロシア産原油は英国の総需要のうち8%を占めている。天然ガスについては、ロシア産の割合は国内総需要の4%未満だが、政府はこれについても削減することを検討する。
英国のクワーテング民間企業・エネルギー・産業戦略相は禁輸措置について「貴重な収入源を絶つことでロシア経済への圧力を強める」と説明。一方で、消費者が影響を受けないように円滑な移行の必要性を強調した。ただ閣議でスナク財務相は、消費者の負担が重くなり特に低所得者層が大きな打撃を受けると懸念を示したとされる。
米政府は直ちに禁輸措置を発動するものの、既存の契約破棄については45日間の猶予を設けた。また禁輸に加えて、ロシアのエネルギー業界への新たな投資やロシアでエネルギーを生産するため投資を行う外国企業への融資なども禁止した。政府は、米国内の原油・ガス生産量が過去最高水準に達する見込みだと強調するとともに、エネルギー価格の上昇を抑えるため今年度中に石油戦略備蓄から9,000万バレル超を放出することを改めて示している。
米政府は先に、ロシア産原油の禁輸について欧州の同盟国と協議していることを明らかにしていた。しかしEUはすぐには代替供給を確保できないため禁輸措置の導入は否定的で、英米が単独で踏み切ることになった。
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