国際エネルギー機関(IEA)は17日、2021年の世界の石炭火力発電量が、過去最高を更新するとの見通しを明らかにした。新型コロナウイルスのパンデミック(世界的大流行)による打撃から経済が急速に回復し、電力需要が急増しているため。天然ガス価格の高騰を受け、一部のガス火力発電所が燃料を石炭に切り替えたことも一因となっている。
最新の世界の石炭見通しによると、今年の石炭火力発電量は前年比9%増え、1万350テラワット時に達する見込み。世界の石炭火力発電量の半分以上を占める中国で9%、インドで12%それぞれ増加する見通しであることが大きい。一方、欧州連合(EU)と米国も今年は20%近く増えるが、来年は電力需要の伸びの減速と再生可能エネルギーの普及で再び減少すると予測している。
製鉄やセメント生産向けなども含む石炭全体の需要は、前年比6%拡大する見込み。パンデミックに伴う経済活動の縮小や低炭素化の影響で20年は前年比4.4%縮小していたため、増加に逆戻りする格好となるが、石炭需要がピークを迎えた13年および14年の水準は下回る見通しだ。ただ、気象パターンや経済成長の勢いによっては、早ければ来年にも石炭需要は過去最高を更新するとみている。
IEAのファティ・ビロル事務局長は「石炭は最大の炭素排出源で、今年の過去最高水準の石炭火力発電量は、炭素排出量の実質ゼロ化を目指す世界の取り組みが大きく軌道を外れていることを示す懸念すべき兆候だ」とコメント。世界の平均気温の上昇を産業革命前から1.5度に抑えるためには、政府は即時、脱石炭に向けた強力な施策を講じる必要があると話した。
英国で今年開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では、石炭火力発電の廃止を約束する声明に世界46カ国が署名。また、会議後の成果文書「グラスゴー気候協定」にも石炭火力発電の段階的な削減が盛り込まれた。温室効果ガス排出の大きな原因となっている石炭の使用削減について、気候関連の文書が明言するのは初めてとなった。[環境ニュース]
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