アフガニスタンの反政府武装勢力タリバンが16日に首都カブールを制圧し、ガニ大統領が国外に脱出したことを受け、欧州連合(EU)加盟各国は自国民や現地スタッフの救出を急いでいる。ドイツとフランスは、北大西洋条約機構(NATO)軍が防御するカブールの国際空港に大使館機能を移転。今後数日間で自国民の国外脱出を見届けた上で、大使館員も帰国させる方針だ。
フランス通信(AFP)によると、このほかオランダも空港近くに大使館を移している。また、イタリアやスペイン、デンマーク、スウェーデン、英国なども、大使館員の引き上げを予定している。
アフガニスタンでは、過去20年にわたり駐留してきた米軍が9月11日までに撤退することが決まり、タリバンの勢力が再拡大。国内ほぼ全域を制圧し、この日にカブールに侵攻した。これを受け、ガニ大統領は無抵抗で国外に脱出。タリバンは勝利を宣言する声明を出した。
NATOのトルテンベルグ事務総長はこの日、英国のジョンソン首相らと会談の上、「国外脱出を促すためカブール空港の稼働継続を支援する」と発表した。現在は米軍も空港警備に参加しているが、ポリティコEUによると、米政府は72時間以内にこれを撤収する方針を示している。
ドイツのマース外相は、「ドイツ国籍者および現地の元職員が数日中に国外脱出できるよう全力を尽くす」としている。同相によると、現在は大使館の中核要員のみが空港内にとどまっている。今後、ドイツ連邦軍機をカブールに派遣し、脱出者を同機で近隣諸国に避難させたうえで、商用機でドイツに帰還させる計画という。
フランスのルドリアン欧州・外務相も、大使館機能を空港に移転し、自国民の脱出を支援しているとした上で、アフガニスタン人スタッフについても、家族を含め既に600人をフランスに受け入れたとしている。
EUも、現地で採用していたアフガニスタン人スタッフの安全確保を急いでおり、加盟27カ国にビザの発給を要請している。
欧米諸国に協力した現地のアフガニスタン人スタッフは今後、タリバンによる報復の標的になると懸念されている。
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