欧州の水素需要は2050年までに年に1億トンを超える見込みで、このうち5,000万トン以上が交通分野、4,500万トンが鉄鋼やセメント、化学などの工業利用になる――。大手会計事務所デロイトを中心に、研究機関の仏IFPエナジー・ヌベルとノルウェーのSINTEFがまとめた報告書で、こうした見通しが明らかになった。
欧州連合(EU)が掲げる「50年までに気候中立」の目標を達成するには、再生可能エネルギー電力由来のグリーン水素が重要となるものの、報告書では今後の水素需要を満たすにはグリーン水素だけでは不十分と指摘。技術的に多様なモデルを採用することで50年までに水素のバリューチェーンを構築するコストを2兆ユーロ削減できるとして、水素生産ではすべての選択肢を用意するよう政策立案者に求めている。
50年の水素需要をグリーン水素で満たすには、EU内で太陽光発電と風力発電の発電容量がそれぞれ1,000~1,700ギガワット必要になると予測。現在は太陽光発電が120ギガワット、風力発電が170ギガワットと必要な発電容量の10%にすぎない。このため、天然ガス由来の水素を二酸化炭素(CO2)回収・貯留(CCS)を通じてクリーン化したブルー水素を促進する必要性も示している。水素を供給するパイプラインも既存のガスのパイプラインを再利用することで、インフラコストが20%程度に抑えられるという。
またロシアやイランなどガス産出国からの水素輸入の重要性にも触れ、気候中立に向けた移行期には必要な水素の約15%がEU域外からの輸入に依存する可能性があるとしている。[環境ニュース]
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。