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EU、輸出管理を厳格化も直ちに適用せず

欧州連合(EU)は25日開いたオンライン首脳会議(サミット)で、新型コロナウイルスワクチンの輸出管理を厳格化することで原則合意した。ただ、国際的なサプライチェーン(調達・供給網)の重要性を考慮し、ただちに輸出を規制するところまでは踏み込まず、英国の製薬大手アストラゼネカなどのワクチンメーカーに「契約上の供給期限の尊重」を求めるにとどまった。

欧州委員会は先に、ワクチンの域外向け輸出の事前承認制度をさらに厳格化することを提案。相手国がワクチンやその原材料の輸出を制限しているかどうかと、相手国の感染状況やワクチンの接種率および調達状況の2点を輸出審査の基準に加える内容で、サミットではこれが承認された。これにより、EUは英国や米国への輸出を制限することが可能となった。

ただ、会合後の声明では「グローバルなバリューチェーンの重要性」への認識も示した。「企業はワクチン生産量を確実に予測し、契約上の納入期限を尊重するべき」とあらためて訴え、特定の国への輸出を規制する姿勢は示さなかった。

フランスのマクロン大統領はサミット後に、「一部企業がEUとの契約を尊重しない限り、輸出を阻止するべきという事実を支持する」とコメント。ドイツのメルケル首相も「EUはワクチンを域内に供給するだけでなく世界に輸出しており、米国や英国とは対照的」との見方を示した。一方、オランダのルッテ首相は、「サミットでは輸出管理の厳格化が容認されたが、適用されないことを望む」とコメント。ベルギーのデクロー首相も同様の考えを示している。

EU域内では、ベルギー北部プールス(Puurs)で米国のファイザーとドイツのバイオ医薬品会社ビオンテックのワクチンが生産されている。英国の製薬大手アストラゼネカのワクチンも、英国内3工場のほか、ベルギー中部セネッフェ(Seneffe)で生産されており、EU域内向けのワクチンは主にここで生産されている。

ただ、アストラゼネカのEU向けの供給は、同工場の生産遅延により滞っている。欧州委はかねて、EUから英国へは1,090万回分のワクチンが輸出されているにもかかわらず、英国からのアストラゼネカ製ワクチンの輸入が皆無であることを問題視。同社が英国向けの供給を優先しているとの見方を示していた。[EU規制]


関連国・地域: 英国EUベルギー
関連業種: 医療・医薬品マクロ・統計・その他経済政治

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