英政府は8日、米政府による航空機大手ボーイングへの補助金支給を巡る欧州連合(EU)の米国製品への報復関税措置について、EU離脱後の移行期間終了後の来年1月1日に停止すると発表した。米国との関係を改善し貿易交渉の進展につなげる狙いがある。
ただし英政府は、米国との間で決着に向けた満足できる進展がなければ、改めて関税を課すとしている。また、2018年に米国がEUからの鉄鋼・アルミニウム輸入に課した新たな関税に対し、EUが導入した報復関税については、来年1月以降もこれを継続する。
航空機を巡っては米国が10月、EUによる欧州航空・防衛最大手エアバスへの補助金に対する措置としてEU製品に対して報復関税を導入。対象製品の貿易額は総額75億ドル相当に上る。これに対してEUは11月に、貿易高で総額40億ドルに上る製品に報復関税を課すと決めていた。
トラス国際貿易相は今回の決定について、「再び独立した貿易国として、ようやく自国の利益と経済に合わせて関税を決めることができる」と説明。米国との通商対立を緩和し交渉による和解で、貿易関係を深める意向を示した。ただ鉄鋼については、違法で不公平な関税から引き続き鉄鋼業界を守るとしている。
EUの高官は航空機を巡る報復関税について、世界貿易機関(WTO)が承認した関税はEUに対するものであり、いずれにしろ来年1月に英国は報復関税を課す権利を失うと指摘する。英国の航空宇宙産業の業界団体ADSグループは、米国からの対応がないまま一方的に停止することに失望感を示した。一方、スコッチ・ウイスキー協会(SWA)は決定を歓迎し、米国に対して報復関税の停止を呼び掛けている。
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。