ジョンソン英首相は18日、気候中立目標の達成に向けた「グリーン産業革命」を発表した。電気自動車(EV)や洋上風力発電、クリーン水素など10項目の計画に総額120億ポンドを投じる。その一環として、2030年までにディーゼル車とガソリン車の新車販売を禁止する方針も打ち出している。
政府は2月、ディーゼル車とガソリン車の販売禁止を当初目標の40年から35年に前倒しすると発表していたが、今回の計画でこれをさらに早めた格好。ただ、ハイブリッド車(HV)については、電気のみでの航続距離が長いモデルに限り35年まで販売が認められる。
政府は自動車の電化を支援するため、13億ポンドを投じてイングランドでのEV充電設備の普及を後押しするほか、ゼロ排出車(ZEV)および超低排出車の購入者に総額5億8,200万ポンドの補助金を支給する。また、EVバッテリーの開発・量産支援に向けては、国内製造業に対する外国投資支援策の予算10億ポンドから、向こう4年に約5億ポンドを振り向ける。
水素分野では、30年までに低炭素の水素生産容量を5ギガワットに拡大することを目指す。その一環として、最大5億ポンドを投じて住宅の暖房・調理への水素利用を促進する。
二酸化炭素(CO2)回収・貯留(CCS)の促進に向けては、2億ポンドを投じて30年までに国内4カ所でCCSクラスターの開発を支援する。
原子力分野では、新規原子力発電所や小型モジュール炉(SMR)の開発に5億2,500万ポンドを投じる。また、住宅・建物のグリーン化には10億ポンドを投資。航空・海運分野では、クリーンな海運技術の開発に2,000万ポンドを投じる。
「グリーン産業革命」ではこのほか、◇洋上風力発電の設置容量を30年までに40ギガワットに拡大する計画◇公共交通機関のゼロエミッション化と自転車道路や歩道の整備◇自然保護◇技術革新およびグリーンファイナンス――の各計画が打ち出されたが、これらについては今回、新たな投資額は示されていない。
政府は「グリーン産業革命」により最大25万人の雇用創出を見込んでいる。ジョンソン首相は「10項目の計画により、50年までに炭素排出量を実質ゼロにする目標へと大きく前進する一方で、何十万人ものグリーン雇用を創出・支援、保護できる」としている。
ただ、今回の投資総額120億ポンドには、洪水・津波対策費52億ポンドなど既に発表済みの投資も多く含まれ、新規投資額は40億ポンドにとどまる。専門家の間では、この投資規模では気候中立目標の達成には不十分との声も上がっている。[労務][環境ニュース]
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