英政府統計局(ONS)は12日、2020年第3四半期(7~9月)の国内総生産(GDP、速報値)が前期比で15.5%拡大したと発表した。過去最大の伸びとなり、リセッション(景気後退)から脱却した。だがONSは、新型コロナウイルスのパンデミック(世界的流行)前と比べ経済規模はいまだ8.2%縮小しており、コロナ禍から完全に回復するには今回の伸びも十分ではないとしている。
産業別に見ると、英経済の原動力であるサービス業は14.2%拡大。前期の19.2%減からプラスを回復した。うち流通・ホテル・レストランが大きく49.9%伸びたほか、自動車販売を含む運輸・倉庫・通信は10.6%増えた。ビジネスサービス・金融は4.4%のプラスだった。
鉱工業は14.3%増加し、前期の16.3%減からこちらもプラスに復帰。うち製造業は大きく18.7%拡大している。電気・ガス・蒸気・空調供給は8.1%、水道・下水・廃棄物処理は4.8%それぞれ伸びた。採鉱・採石は1.3%のプラスを確保している。
建設業は41.7%拡大。農林水産業は5.7%増加した。
GDPは前年同期比では9.6%減少。前期の21.5%減から落ち込みは緩和している。
一方、9月単月で見ると、GDPは前月比1.1%拡大。ロックダウン(都市封鎖)の緩和が続き、5カ月連続でのプラスとなった。それでも英国で新型コロナウイルスの流行が本格化する前の2月と比べると8.2%縮小している。
ONSは今回の結果について、サービス業と製造業、建設業で過去最大の伸びが見られたものの、GDPはパンデミック前の昨年第4四半期の水準を下回っていると指摘。支出もパンデミック前の水準を大幅に下回っており、ビジネス投資の回復の勢いが個人消費より弱いとしている。
英中銀イングランド銀行は11月、GDPは第4四半期に前期比2%縮小するものの、来年第1四半期にはプラスに回復するとの予想を示した。ただ、この見通しは新型コロナウイルスの感染拡大が徐々に収まり、欧州連合(EU)との自由貿易交渉がまとまることを前提としている。いずれの要素も先行き不透明感が強いことから、中銀は今回の見通しについて大きな誤差を見込んでいる。
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