英下院(定数650)は14日、国内市場法案を第2読会で可決した。同法案は、昨年10月に欧州連合(EU)と締結したEU離脱協定の一部をほごにする権利を政府に与えるもので、国際法に反するとの批判もある。与党・保守党からは2人の重鎮議員が造反したほか、閣僚経験者ら30人が投票を棄権したが、英領北アイルランドの親英強硬派、民主統一党(DUP)の支持を得て340対263の賛成多数で可決された。
国内市場法案には、EU離脱協定で定められた北アイルランドに関する議定書の一部を政府が無効にできる条項が含まれる。同議定書は、英・EU間の貿易協定がまとまらなかった場合も、北アイルランドとアイルランドの間で厳格な国境検査を避けるためのもので、これに向け北アイルランドをEU単一市場にとどめることなどを定めている。
ジョンソン首相は採決に先立ち、EUの現在の考え方でいけば、英国本土と北アイルランドの間の製品の行き来に過度の検査や関税が課される恐れがあるとし、国内市場法案は英国の「経済的・政治的統一性」を守るために必要と説明した。また、EUは貿易交渉で食品輸出規制の脅しをかけるなど、離脱協定を利用して不当な要求をしていると批判している。
これに対し、造反議員の1人であるロジャー・ゲール議員は同法案について、「英国がこれから各国との貿易交渉を開始する時に、誠実な交渉相手としての国際的評価を傷つけることになる」と批判。国際法順守の「原則」として同法案に反対し続けるとしている。保守党からはこのほか、ジャビド前財務相やコックス前法務長官が投票を棄権した。
EUは国内市場法案の内容に強い懸念を示しており、9月末までにこれを撤回するよう求めている。
下院では来週、同法案に反対する保守党の一部議員が提出した修正案の採決が行われる。これは、離脱協定を無効にする措置について、下院の承認を義務付ける内容。また、下院を通過しても上院でかなりの造反者が出る可能性もあり、法案承認には数カ月かかる可能性もある。
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