英議会の超党派議員で構成する情報安全保障委員会(ISC)は21日、ロシア政府による英政治への介入に関する調査報告書を公表した。ロシアは、英国における影響力を高めるため、サイバー攻撃や偽情報の拡散、上層部の人脈づくりなどを展開したが、英国はこれを看過してきたと指摘。早急な対策が必要と訴えている。
報告書によると、ロシアの外交政策は、一方の利益が他方の損失になる「ゼロサム」の原理に基づき、欧米諸国へのいかなる打撃も、自国の利益になると理解している可能性が高いと指摘。また、北大西洋条約機構(NATO)や欧州連合(EU)がロシアに対して実際よりも高圧的な態度で臨んでいるとの強い不信感も影響していると分析した。
英国は、米国との関係が深いこと、欧州における反ロシア政策の中心にいると捉えられていることなどから、介入優先国の一つとされる。こうした中、2014年のスコットランドの英国からの独立を問う住民投票や16年の英国の欧州連合(EU)離脱を巡る国民投票では、ロシアが情報工作を行った疑惑が浮上したが、英情報機関は調査を見送ったと批判した。
また、ロシアの指導部が英国入りし、マネーロンダリング(資金洗浄)などの不正金融や、政界や実業界との関係構築を進めたが、英国側はこれを歓迎。英国におけるロシアの影響は、「ニューノーマル(新たな日常)」であると警鐘を鳴らした。
同報告書を巡っては、ISCは19年3月に調査を完了し、10月に首相官邸に提出したものの、承認と公表が遅れていた。これに対して野党などが、12月の総選挙を前にジョンソン政権が意図的に情報を隠ぺいしたとして批判した経緯がある。
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