スナク財務相は8日、若年層の雇用創出に向けた総額20億ポンドの新制度「キックスタート・スキーム」を公表した。政府が半年にわたり法定最低賃金を負担することにより、企業に新規雇用を促す内容。新型コロナウイルス危機を受けた雇用保護計画の一環で、ほかにもホスピタリティー産業向けの一時的なVAT(付加価値税)減税や、外食支援措置などを打ち出している。
「キックスタート・スキーム」は、福祉手当の給付を受けている16~24歳の若年層が対象。こうした層を週25時間以上雇用する企業には、向こう6カ月間の最低賃金と管理費を政府が肩代わりする。同相は加えて、研修生を引き受ける企業に1人当たり1,000ポンドの報奨金を支払い、3万人の新規研修生ポストの確保を目指す。
これらの措置の背景には、若年層は就労経験に乏しい上、打撃の大きいホスピタリティー産業の就労者に占める比率が高いため、新型コロナ危機を引き金に長期的失業に陥る危険性が高いことがある。
同相はこのほか、一時帰休中の従業員の賃金を補助する「コロナウイルス雇用維持制度」が10月に終了した後、3カ月にわたり雇用を維持した企業を対象に、従業員1人当たり1,000ポンドの報奨金を支払う方針も示した。
大量の雇用喪失が懸念されているホスピタリティー産業の支援に向けては、7月15日から来年1月12日まで、VATの税率を20%から5%に引き下げる。飲食店や宿泊施設、レジャー施設などが対象で、15万件の事業が恩恵を受ける見通し。減税規模は総額40億ポンドを見込む。
加えて、8月の毎週月~水曜は1人当たり10ポンドを上限に、外食料金の半額を政府が負担する。ただし、登録した飲食店での食事に限られ、アルコール飲料は対象外となる。この措置の予算は5億ポンド。
スナク財務相はこのほか、不動産市場の刺激に向け、この日付けで購入価格の50万ポンド分まで印紙税を免除すると発表した。期間は来年3月末まで。これにより、住宅購入者の9割は印紙税を免除される見通し。
一連の措置の財源については明らかにされていない。ジョンソン政権は新型コロナ危機による急激な景気悪化が予想される中、与党・保守党の本来の方針に反し財政出動による大規模な支援策を次々と打ち出している。ただ、野党各党からは、今回の措置では賃金補償終了後の大量失業者発生は防げないとの声も上がっている。[労務]
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