ジョンソン英首相の最側近である上級顧問のドミニク・カミングス氏が25日、自らの外出規制違反疑惑を巡り異例の記者会見を実施した。同氏は3月末ごろ、新型コロナウイルス感染の疑いで自主隔離中にイングランド北東部ダラムの実家まで家族と移動したと説明。自身と妻の症状が悪化した際に息子の世話を依頼できるようにするためだったとし、政府ガイダンスが示す「例外」に当たる行動だったとして国民に理解を求めた。この件を巡っては、政府の要請内容を覆すものだとして与党・保守党の一部議員と野党側から辞任を求める声が上がってるが、同氏は辞任の可能性を否定している。
カミングス氏は記者会見で、当時は妻に新型コロナウイルスの症状が出た上、自らも感染が疑われる中、4歳の息子の通常の預け先がいずれも利用できなかったと釈明。父親が所有する農場のコテージに移動することに決めたとしている。また、約400キロメートルの道のりを車で5時間かけて移動したが、途中下車はしなかったと説明。到着後にカミングス氏の症状は悪化、息子にも症状が出たが、妻は改善したという。なお、カミングス氏と妻は最終的に感染検査は受けていない。
同氏は今回の件について、ジョンソン首相にも事前に連絡や相談はしなかった。これについては「首相は新型コロナウイルスに感染し療養中だった。常に首相に判断を仰いでいるわけではない」と釈明。自らの行為に後悔はしていないとし、逆にメディア報道は事実を歪曲(わいきょく)していると批判した。
英政府が3月23日に開始した封鎖措置では、主な居住地にとどまるよう要請しており、症状のある人は完全に自主隔離すべきと定めている。同氏の規制違反はガーディアンとデーリー・ミラーが最初に報じており、ダラムの警察当局もカミングス氏の父親に事情聴取している。
ジョンソン首相は24日の定例会見で、カミングス氏の行動の正当性を主張。「父親としての感覚に沿っただけだ」とした。これに対し、最大野党・労働党のスターマー党首は「英国民の自己犠牲に対する侮辱だ」と抗議。国民に対する政府のメッセージを覆す行為で、本格調査を行うべきとした。
なお、同氏には4月に2度目の規制違反をしていた疑いも浮上していたが、記者会見でこれを否定している。
カミングス氏は英国の欧州連合(EU)離脱を巡る2016年の国民投票時に、EU離脱派のキャンペーンの参謀を務めたことで、ジョンソン政権誕生時に登用されている。ブレグジットの影の立役者ともされる同氏を失うことは、政権にとって大きな痛手となるため、擁護に必死になっている格好だ。
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