英国とアイルランドの両政府は、英領北アイルランドの自治政府の発足に向けた協定案を公表した。親英強硬派の民主統一党(DUP)と親アイルランド派のシン・フェイン党が10日にこれを支持する方針を示したことから、2017年から続いていた政権不在にようやく終止符が打たれる見通しとなった。
英国のスミス北アイルランド相とアイルランドのコブニー副首相兼外相は9日夕、北アイルランド・ベルファストで同協定案を公表した。両政府はこの中で、公共サービスや政治システムの改善など、新政権が取り組むべき課題を提案。長年にわたり争点となっている北アイルランドでのアイルランド語の公用語化や、ベルファスト合意に基づく党派間の紛争の解決、北アイルランド議会における法案否決権などの問題についても解決への道筋を提示した。また同案には、英国とアイルランドによる支援策も含まれており、英政府は北アイルランドの医療サービスやインフラへの追加投資を約束している。ただ、具体的な金額は明らかにされていない。
DUPのフォスター党首は同案について、「完璧ではなく妥協の結果も含まれている」とした上で、「自治政府および議会を公正かつバランスのとれた形で再確立する土台となる」と評価。一方、シン・フェイン党のマクドナルド党首は「権力の共有は可能だと信じるが、それには全員が歩み寄る必要がある」と強調した。
北アイルランドでは、1998年に紛争の終結と和平実現に向けて結ばれたベルファスト合意に基づき、自治政府の閣僚ポストを親英派と親アイルランド派の主要政党が分け合うことになっている。しかし2017年1月に、DUPとシン・フェイン党の不和から政権が崩壊。同年3月の北アイルランド議会選挙後に行われた組閣協議も決裂し、自治政府の不在状態が続いていた。しかし、英政府が1月13日までに主要各党が合意に至らなければ地方選挙を実施するとしたことを受け、昨年12月にようやく、両党を含む主要5党が自治政府の発足に向けた協議を開始していた。この背景には、先の総選挙で議席を減らしたDUPとシン・フェイン党が地方選挙を避けたがっていることもある。
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