イラン政府は5日、2015年に欧米などと締結した核合意を巡り、合意で規定されたいかなる制限も順守せず、ウラン濃縮活動を無制限に行うと発表した。昨年5月から段階的に進めてきた核合意の履行停止の「第5弾」で、最終的な措置という。これにより、核合意が事実上崩壊したと見る向きもあり、イラン軍のソレイマニ司令官殺害で緊張が高まる米国との関係が一層悪化する恐れがある。
イラン政府は声明で、包括的合同作業計画(JCPOA)の制限の最後の主要項目である「遠心分離機の数の上限」を撤廃すると表明。イランは既に、低濃縮ウランの貯蔵量やウラン濃縮度の基準、運用する遠心分離機の性能などについても違反している。
一方、イランは今後も国際原子力機関(IAEA)との協力を続けていく方針。さらに、米国が制裁を解除し、JCPOAの恩恵を受けることができれば、核合意の履行停止を撤回する意向を示した。
今回の発表を受け、英独仏の首脳はこの日夜に共同声明を出し、イランに核合意に違反する措置を撤回するよう要請。「中東地域の緊張緩和と安定の再構築に向けて、全ての当事国と引き続き協議を行う用意がある」と述べた。欧州連合(EU)も協議に向け、イランのザリフ外相にブリュッセル訪問を打診したという。
■イラクが米軍の撤収要求へ
イラク議会は5日、米軍を含む外国軍の駐留を終わらせることを政府に求める決議案を採択した。議会は、米国がイラン革命防衛隊(IRGC)の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官を空爆で殺害したことを受け、緊急で招集された。
ザ・ナショナルによると決議案にはこのほか、国際的な有志連合に対するイスラム過激派組織「イスラム国(IS)」掃討に向けた支援要請の撤回や、イランのソレイマニ司令官を殺害した米国に対する抗議を国連に申し立てること、外国軍によるイラク領空の飛行禁止といった内容が含まれる。
米国は先に、イラクの首都バグダッドの国際空港でソレイマニ司令官を空爆で殺害。トランプ米大統領による指示で、「外国にいる米国人を守るための防衛措置」と説明している。イランはこれを強く非難し、報復する構えを見せており、両国間の緊張が高まっている。
こうした中、トランプ米大統領は4日、イランがソレイマニ司令官殺害の報復で米国に攻撃した場合、イランの重要施設52カ所へ反撃すると警告している。
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