ロンドン中心部で11月29日に起きたテロ事件の犯人が、過去のテロ未遂事件を巡る刑期の半ばで仮釈放されていたことを受け、ジョンソン首相は1日、テロリストや凶悪犯の早期釈放制度を見直す方針を示した。また、今回の犯人と同様の状況で釈放された人物がほかにも74人いると明らかにした上で、これらの人物の監視を直ちに強化するとともに、釈放条件を見直すとしている。
ロンドンブリッジ近くのビルで起きた今回の事件では、刃物を持った男が2人を刺殺し、3人にけがを負わせた後、警察に撃たれて死亡した。ウスマン・カーン容疑者(28)は、2012年にロンドン証券取引所(LSE)の爆破未遂事件に関与し、懲役16年の刑を科されたものの、早期釈放制度の条件を満たしたため2018年12月に仮釈放されていた。
ジョンソン首相は公共放送BBCのテレビ・インタビューで、「この男が釈放された事実をきわめて遺憾に思う」とした上で、かつての労働党政権が早期釈放制度を導入したことを非難した。2010年から続く保守党政権がこの制度を放置したことを追及されると、「自分が首相となったからには、重大な性犯罪や凶悪犯、テロリストにかならず刑期を全うさせる措置をとる」と強調した。
一方、最大野党・労働党のコービン党首は、「テロ犯罪にかかわった人物でも、状況や刑務所内での実績によっては、必ずしも刑期を全うする必要はない」とコメント。事件への反動で厳罰化するべきではないとした上で、むしろ保護観察制度やメンタルヘルスなどへの公共支出を増やすことにより、犯罪を予防すべきとしている。
■保守党、国境警備の強化を公約
保守党は、12月12日の総選挙に向け、国境警備を強化する方針を打ち出した。生体認証パスポートの義務付けと、出入国管理の自動化により、凶悪犯罪歴のある人物が欧州連合(EU)から入国するのを防げるとしている。BBC電子版が2日伝えた。
同党は併せて、米国と同様の「電子渡航認証システム(ESTA)」を採用する方針も示している。これが導入されれば、英国への渡航者は事前にオンラインで渡航認証を受けることが必要となる。
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