欧州議会は次期欧州委員に関する公聴会を開き、フランスとルーマニアが新たに選出した候補者を承認した。一方、ハンガリーの候補者には、18日までに追加質問に回答するよう要求。この内容が基準を満たせば、27日にフォンデアライエン次期欧州委員長率いる新体制の最終承認に向けた投票が行われ、12月からの正式始動も見えてきた。AP通信などが伝えた。
フランスが擁立したティエリー・ブルトン元経済・財務・産業相(現在の経済・財務相に相当)は、3時間に及ぶ審問を経て、公聴会に出席した欧州議員の3分の2以上の承認を獲得。最大会派で同氏も以前所属していた中道右派の欧州人民党(EPP)は、早々に支持に回った。左派や緑の党は、同氏が仏IT(情報技術)コンサルティング大手アトスの会長兼最高経営責任者(CEO)を務めていたことなどを理由に利益相反の面で追及したが、アトスなどの保有株式を全て売却し、全ての役職から退いたと主張したことが奏功した。
フランスは当初、域内市場・防衛・宇宙産業担当委員候補としてシルビー・グラール中銀副総裁を推していたが、欧州議会の公聴会の結果、欧州議員在職中の公金流用疑惑などを理由に却下されていた。マクロン仏大統領にとり、新たな候補者が承認を得たことで、ひとまず懸念は解消されたことになる。
ハンガリーは、欧州近隣政策・拡大交渉担当委員の新たな候補として欧州連合(EU)外交官のバルヘーリィ・オリベル氏を擁立した。しかし、欧州議会議員からは、移民問題や法の順守などでEUと度々衝突してきた同国のオルバン首相寄りの政策を推し進めるのではないかとの懸念が浮上。オリベル氏はEUの利益に沿った政策を実行すると主張したものの、書面での追加質問に応じるよう命じられた。支持を得られなければ、同氏は再び公聴会に臨むことになる。
ルーマニアが運輸担当委員候補として新たに推したアディナイオアナ・バレアン欧州議員も、承認を獲得。本会議で次期欧州委員会が全体として承認されれば、晴れて12月1日に正式に発足することも可能となる。
■不選出の英には法的措置も
欧州委は14日、英国が依然として次期欧州委員候補を擁立しないことに対し、EU条約に基づく義務を果たしていないと書簡で通告した。英政府は22日までにこれに応じる必要があり、返答を急ぐ背景には新体制の欧州委をなるべく早く発足したいEUの思惑がある。
英国は、12月12日の総選挙実施と選挙期間中は国際的な役職の任命を行わないという国内指針を順守することを理由に候補を出していないが、EUは自国の法制度を理由にEU法を順守しないことは違反行為に当たるとしている。欧州委が最終的にこの案件を欧州司法裁判所に持ち込んだ場合、英国に罰金が科される可能性もある。[EU規制]
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