英国の与党・保守党の党首選で最有力候補とみられているジョンソン前外相の減税案が実施されれば、国庫に200億ポンドの負担をもたらし、恩恵を受けるのは主に富裕層のみ――。民間シンクタンクの財政研究所(IFS)が25日、こうした試算を公表した。大幅な歳入減につながるこれらの措置は、緊縮財政を終了するという現政権の約束とは相いれない可能性があるとの見方を示している。
ジョンソン候補はかねて所得税について、税率40%の対象となる所得額を現在の年間5万ポンド以上から8万ポンド以上に引き上げる方針を示している。IFSはこれが実施された場合、年90億ポンドの税収減になると予想。減税による恩恵の大部分は上位10%の高所得層が享受するとみている。
一方、同氏は富裕層優遇の批判をかわすため、国民保険料の支払い義務が発生する最低所得額を引き上げる方針も打ち出している。具体的な数値は示されていないが、例えばこれが所得税の課税限度額である1万2,500ポンドまで引き上げられた場合、110億ポンド以上の歳入減につながる見通し。IFSは、国民保険料の賦課限度額の引き上げは低所得層の支援に役立つとした上で、メリットの大部分はなお高所得層が享受すると指摘。低所得層を優遇するためには税額控除の方が効果的としている。
IFSのエコノミストは、「減税にこれほどの金額を費やすことが、公共支出削減の終了や堅実な財政運営と両立するかどうかは不透明」とコメントしている。なお、党首選の対抗馬であるハント外相は、法人税率を17%から12.5%に引き下げる方針を示唆している。
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