欧州連合(EU)加盟28カ国は20日、ブリュッセルで開いた首脳会議(サミット)で、欧州委員会のユンケル委員長の後任などEUのトップ人事を協議したものの、合意には至らなかった。各国首脳は30日に臨時サミットを開催し、再度話し合う予定だ。
EUのトゥスク大統領はサミット後の記者会見で、「どの候補者も必要な数の支持を得られなかった」と発表。「各種役職の人事はEUの多様性を反映する必要があるという点で合意した」と話した。
次期欧州委員長には原則として最大会派の筆頭候補者が就任することになっている。先の欧州議会選挙で最多の議席数を確保した中道右派の欧州人民党(EPP)グループはマンフレート・ウェーバー党首(ドイツ出身)を擁立しており、メルケル独首相はかねて同氏を支持していた。一方、マクロン仏大統領はウェーバー氏の政治的経験の不足などを理由に強く反対し、筆頭候補制度を廃してEU首脳の話し合いで選出するべきと主張。この日の協議でも両者の溝は埋まらなかった。
また、2大会派のもう片方である中道左派の欧州社会・進歩連盟(S&D)とリベラル派の欧州自由民主改革党(ALDE)もそれぞれの党首を筆頭候補として推していたが、いずれも支持を得られなかった。欧州委員長の任命には、EU加盟28カ国のうち21カ国と、欧州議会(定数751)の過半数の支持が必要となる。
臨時サミットが開かれる6月30日は、欧州議会の新会期が始まる7月2日のわずか2日前となる。AFP通信によると、EU首脳は、欧州議会が新議長を選出するまでに欧州委員長人事を決着させることを目指している。[労務]
■次期EU予算は10月から協議
EU首脳はこの日のサミットで、2021~2027年を対象とする次期EU予算の編成を巡る協議を10月に開始することで合意した。年内に大まかな割り振りを固めることを目指す。
気候変動対策を巡っては、欧州委が提案していた2050年までに炭素排出量を実質ゼロにする目標について協議したものの、合意には至らなかった。ドイツはこれを強く支持したものの、ポーランドやハンガリーなど一部加盟国が強く反対したため、合意文では「大半の加盟国は2050年までの排出量実質ゼロ化を目指すべき」と注記するにとどまった。
9月に開かれる国連の気候変動会議までに新目標で合意できなければ、気候変動対策で世界をリードするというEUの方針が揺らぐ上、中国など他国に努力を促すことも難しくなる。[EU規制][環境ニュース]
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