英下院で27日午後7時ごろから、メイ首相が欧州連合(EU)と合意した離脱協定に代わる選択肢を探る「示唆的投票」が行われる。下院は25日夜に示唆的投票を行う案を賛成329票、反対302票で可決し、立法議案の主導権を一時的に首相から奪うことを決めた。EU離脱を巡るこう着状態を打破する狙いで、議員は関税同盟残留や国民投票の再実施、合意なき離脱などの代替案に対して支持を表明する機会を与えられる。
示唆的投票を行う案は与党・保守党のオリバー・レトウィン議員が提出したもので、与野党から広く支持を集めていた。メイ首相は採決に先立つ下院での演説で、「こうした手法は英国の民主的制度のバランスを覆すもので悪しき前例となる」と述べ、保守党議員に反対票を投じるよう指示していた。しかし、与党・保守党からは30人の議員が造反。このうちハリントン産業担当閣外相を含む3人の閣外相は、この日に辞任した。
27日の投票では、下院議員が提出した複数の代替案について、賛否を問う採決が行われる。提案が見込まれるのは、最大野党・労働党が支持するEU関税同盟への残留案、一部のEU離脱派が支持するカナダ型の自由貿易協定案や合意なき離脱案、一部の残留派が支持する2度目の国民投票案、EU離脱の撤回案など。段取りは未定だが、支持率の高い選択肢を絞り込んだ上で、4月1日に決選投票が行われる見通し。1度目の投票では、採決の順番が結果に影響を及ぼすことを避けるため、1枚の投票用紙に全ての選択肢を記載し、各議員がそれぞれについて賛成か反対かを選ぶ方式が検討されているもようだ。
ただ、いずれの案も過半数に満たない可能性もある。また、示唆的投票の結果に法的拘束力はなく、選ばれた案が与党・保守党の選挙公約に反するものだったり、EUが受け入れる見込みがない場合、政府はこれを実行しない可能性が高い。メイ首相も「どんな結果が出るかわからないのに実行すると約束はできない」としている。欧州委員会のユンケル委員長は、「交渉相手がメイ首相率いる政府であることに変わりはない」との姿勢を示している。
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