英下院が29日、英国の欧州連合(EU)離脱協定に含まれる「バックストップ(安全策)」を別の措置に置き換える修正案を可決したことを受け、メイ英首相はEUに離脱協定の再交渉を求める方針を示している。「バックストップ」について法的拘束力のある変更を求めるとしているが、トゥスクEU大統領は再交渉の可能性を明白に否定しており、実現の可能性は疑問視されている。
メイ首相は同修正案の可決後に下院で行った演説で、「バックストップへの懸念に対処すると同時に、アイルランドと英領北アイルランドの間の厳格な国境検査の再開を防ぐような、法的拘束力のある変更をEUに求める」と話した。ただ、「EUにはこうした変更への意欲は薄く、交渉は容易ではないだろう」と認めている。メイ首相は30日にアイルランドのバラッカー首相と会談したほか、週内にEU首脳と会談する見通し。
一方、EUのトゥスク大統領は広報官を通じて、「離脱協定は英国の秩序あるEU離脱を実現するための唯一にして最良の方法」とコメント。「バックストップは離脱協定の一部分であり、離脱協定の再交渉は行わない」としている。またEUのバルニエ首席交渉官も「EUは一致団結して離脱協定を守る」と強調。アイルランドのコブニー副首相兼外相は、「英国に(バックストップの)約束を守らせるのがアイルランド政府の責任」との考えを示している。
「バックストップ」は、移行期間中に英・EU間の貿易協定がまとまらなかった場合に、アイルランドと英領北アイルランドの間の厳格な国境検査を避けるため英国全体がEU関税同盟にとどまる措置。与党・保守党内の離脱強硬派がこれが恒久化することを危惧し反対していたため、メイ首相は離脱協定への支持獲得に向け、これを別の措置に置き換える修正案を自ら支持した。同首相は今後、2週間にわたりEUと「バックストップ」を巡る変更を協議した上で、2月13日までに再び下院で離脱協定の承認を問う考え。下院が再びこれを否決すれば、再度、下院議員からさまざまな修正案が提出されることになる。
なお、英下院は29日に合意なきEU離脱を拒否する案も可決したが、この決定に法的拘束力はない。現時点で英国は、合意の有無にかかわらず3月29日にEUを離脱することになっている。
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