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メイ首相、離脱協定の再交渉へ 国境問題巡る修正案可決=英下院

英下院(定数650)は29日夜、英国の欧州連合(EU)離脱協定に含まれる「バックストップ(安全策)」を別の措置に置き換える修正案を、賛成317票、反対301票で可決した。これを受け、メイ首相はEUに離脱協定の再交渉を求める方針。与党・保守党内のEU離脱強硬派が嫌う「バックストップ」を取り除くことにより、2月中旬の下院での採決で離脱協定への支持を取り付けることを目指す。しかし、EUはかねて英国との再交渉を否定しているため、協議が難航することは必至だ。

メイ首相は先に、下院がEU離脱協定を歴史的大差で否決したことを受け、代替案を提示した。しかし、その内容は従来路線と大きく変わらず、あくまで同協定への支持獲得に努める一方、これが否決されればEU離脱期限である3月29日に合意のないまま離脱するとしていた。これに対し、与野党の議員から14件の修正案が提出され、この中からバーコウ下院議長がこの日に7件を選んで採決を行った。

このうち、「バックストップ」を取り除く修正案は、保守党のグラハム・ブレイディー議員が提出したもの。メイ首相自身もこの案への支持を表明し、保守党議員に賛成票を投じるよう指示していた。下院の後ろ盾を得ることにより、EUに再交渉を求めやすくなるとの思惑もある。「バックストップ」は、移行期間中に英・EU間の貿易協定がまとまらなかった場合に、アイルランドと英領北アイルランドの間の厳格な国境検査を避けるため英国全体がEU関税同盟にとどまる措置で、離脱強硬派はこれが恒久化することを危惧し反対していた。同首相は今後、2週間にわたりEUと「バックストップ」に代わる案を協議し、離脱協定を修正した上で、2月中旬に再び下院で承認を問う考えだ。

下院はこのほか、保守党のキャロライン・スペルマン議員と最大野党・労働党のジャック・ドロミー議員が共同で提出した、合意なき離脱を拒否する案も賛成318票、反対310票で可決した。ただ、この決定に法的拘束力はなく、メイ首相に与える影響は少ないとみられている。

これら以外の5件の修正案は、いずれも否決された。このうち、可決の可能性が高いとみられていた労働党のイベット・クーパー議員が保守党のニック・ボウルズ議員と連名で提出した離脱の延期を可能にする修正案は反対298票、賛成321票と23票差で否決された。この案は、2月26日までに下院でEU離脱協定の承認が得られなければ、離脱を最長9カ月遅らせるとする内容で、労働党など野党各党が支持した一方、メイ首相は反対していた。

今後は、EUが離脱協定の再交渉に応じるかどうか、また交渉が再開されても2週間の短期間で代替案がまとまるかが焦点となる。メイ首相は、EUは合意内容の変更に対して「限れた意欲しかない」としながらも、事態打開に向けた何らかの変更を取り付けられると前向きな姿勢だ。なお、同首相は投票に先立ち、欧州委員会のユンケル委員長やアイルランドのバラッカー首相らEU側の首脳陣と相次ぎ電話会談を行った。

なお、労働党のコービン党首は投票後に、メイ首相と会談の場を持つ方針を示した。これまでは合意なき離脱の可能性が排除されない限り協議に応じないとしていたが、歩み寄りの姿勢を見せた格好だ。


関連国・地域: 英国EUアイルランド
関連業種: マクロ・統計・その他経済政治

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