英下院で9日、欧州連合(EU)離脱協定を巡る議論が再開された。15日には同協定を巡る投票が予定されているが、可決のめどはなお立っておらず、同協定が否決されれば合意なしにEUを離脱する可能性が高まることになる。BBC電子版が伝えた。
メイ首相が昨年11月にEUと合意した離脱協定の発効には英議会の承認が必要となるが、野党各党が同協定に反対しているほか、同協定に含まれるアイルランド国境の「バックストップ(安全策)」には、与党・保守党のEU離脱強硬派と同党に閣外協力する北アイルランド・民主統一党(DUP)も反発している。メイ首相はEUから「バックストップ」への懸念を払しょくする法的確証を得る方針だが、現時点でまだ成果は見られていない。
こうした中、下院では8日、英国が合意なしにEUを離脱した場合、政府が下院の承認なしに税制を改正できなくする法案が賛成303票、反対296票の僅差で可決された。この法案は、保守党と最大野党・労働党の議員が共同で提出したもので、20人の保守党議員が政府に造反し賛成票を投じた。同法案には合意なしの離脱を回避する狙いがあるが、実質的にこれを阻止する効果はない。
離脱協定が否決された場合、政府は21日以内にその後の方針を議会に示し、その後7日以内に具体策を提案することを、英EU離脱法によって義務付けられている。ただ、下院では先に、離脱協定が否決されれば下院の投票でその後の方針を決めることもできるとの法改正が可決されており、実際にどのようなシナリオが展開されるかは不明。可能性としては、合意なしの離脱に加え、下院での再投票や、EUとの再交渉、総選挙の実施、2度目の国民投票の実施も考えられる。
英国は3月29日にEUを離脱することが決まっており、メイ首相はかねてこの期限を厳守する方針を示している。ただAFP通信によると、英国とEUは数週間前からこの期限の延長について協議しており、EU外交筋の間では、同首相が期限延長をEUに求める可能性があるとみている。
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