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英政府、移民労働者白書を公表 技能重視でEU市民優遇せず

政府は19日、欧州連合(EU)離脱後の移民労働者の受け入れに関する白書を公表した。EUからの移民を優遇せず、技能を持つ労働者であれば出身地に関わらず無制限に受け入れる方針。一方で、技能労働者の条件として最低3万ポンドの年収を求める可能性も示唆。移民数制限を目指すメイ首相の方針には、経済への影響を懸念する閣僚から批判の声も上がっている。

現在はEU出身者であれば、低技能でも英国内での就労が無条件に認められているが、今後はこうした優遇措置は廃止される。一方、英国は現在、医師やエンジニアなどの技能労働者の受け入れ数に上限を設定しているが、今後はこれを撤廃する。ただ、技能労働者向けの5年間有効のビザ(査証)の発給条件の一つとして、最低3万ポンドの年収があることを求める方針で、意見公募を実施した上で最終決定を行うとしている。このほか、低技能労働者に最長1年の短期ビザを発給する案や、EU市民にはビザなしでの訪問を認める案も打ち出している。新制度は2021年から段階的に導入する方針。

フィナンシャルタイムズによると、技能労働者の年収条件を巡っては、移民数制限を目指すメイ首相がこれを支持する一方、企業寄りのハモンド財務相やクラーク・ビジネス・エネルギー・産業戦略相が人材不足を招くとして反対したため、意見公募を実施することになった。現在、英国内で働くEU移民の76%は年収が3万ポンドを下回っている。

また、与党・保守党はかねて移民の純増を年間10万人以下に抑える目標を掲げてきたが、白書ではこれに言及しておらず、ジャビド内相は公共放送BBCのインタビューで「持続可能な水準に抑える」と述べるにとどまった。ただ、メイ首相は下院で、この目標を維持する方針を示している。英国の2017年の移民純増数は28万2,000人だった。

■合意なし離脱に備え追加予算

政府は18日、欧州連合(EU)を合意なしで離脱する場合への準備を強化するため、各省庁の2019/20年度予算を計20億ポンド超、拡大すると発表した。EU離脱準備に向け2016年以降に積み増してきた42億ポンド超の引当金から拠出し、国境管理や貿易、安全保障などの優先分野に振り向ける。

追加予算が最も多いのは内務省で、4億8,000万ポンドを確保。国境警備隊の人員を数百人増やすほか、英在住のEU市民の居住権継続措置や、安全保障に充てる。環境・食料・農村地域省は4億1,000万ポンドで、水域管理や水・農産物や化学品の円滑な貿易の継続に向けた措置に振り向ける。歳入関税庁(HMRC)では3億7,500万ポンドを投じて、通関業務の増加に対応するため現場スタッフを3,000人増員するほか、通関手続きの円滑化に向けたIT(情報技術)システムの導入を目指す。

ガーディアンによると、この日の閣議では合意なし離脱に伴う混乱に対応するため、3,500人の兵士を待機させることや、物資の緊急輸送に備えフェリーのスペースを確保することも決まった。また政府は、国内企業向けに合意なし離脱への備えに関する約100ページの冊子を用意するほか、8万通の電子メールを送付する計画。個人向けにはテレビ広告やソーシャルメディアを通じて準備を呼び掛ける。[労務]


関連国・地域: 英国EU
関連業種: 食品・飲料化学農林・水産運輸IT・通信メディア・娯楽マクロ・統計・その他経済雇用・労務政治社会・事件

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