ドイツを代表する5つの経済研究所は秋季合同経済予測の中で、今年の国内総生産(GDP)成長率の見通しを4月時点の2.2%から1.7%へと大幅に引き下げた。輸出の伸び悩みや労働力不足などが理由。米国との貿易摩擦がエスカレートすれば、ドイツと欧州連合(EU)はリセッション(景気後退)に陥る可能性もあるとしている。
合同経済予測は、連邦経済技術省の委託により春と秋の年2回発表される。今回の予測は、Ifo経済研究所、RWI経済研究所、ドイツ経済研究所(DIW)、ハレ経済研究所(IWH)、キール世界経済研究所(IfW)の5つの研究所が合同でまとめた。
それによると、国内経済は今年も6年連続で伸びるものの、勢いに衰えが見られる。その背景には、新興市場の不振や米トランプ政権の保護貿易主義的な政策による貿易摩擦の高まりを受け、世界貿易が伸び悩んでいることがあると分析。また、スキルを持つ労働者の不足や、中間財の調達の滞りが生産のボトルネックになっていることも原因としている。さらに、主力の自動車産業で9月に導入されたEUの新基準「乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法(WLTP)」の影響による在庫の増大や納車ペースの落ち込みが原因で、同業界によるGDPへの貢献度が低下すると予想する。
2019年については、こうした問題への調整が進み、財政刺激策の効果も表れることから、GDP成長率が1.9%へとやや加速すると予想。2020年も1.8%で推移するとみる。
ただ、トランプ米大統領が警告通りEUからの自動車輸入に高関税を課せば、ドイツとEUは大規模なリセッションに陥り、特にドイツでは大量の雇用が失われ生産性が低下する恐れがあると指摘。また、今回の予測を巡る下振れリスクとしては、米中間の貿易摩擦による生産コストの上昇や、通貨危機に陥っているトルコやアルゼンチンの不振が他の新興市場に飛び火する可能性に加え、英国がEUから何の合意もなしに離脱することを挙げている。[労務][環境ニュース][EU規制]
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