トランプ米大統領は8日、イラン核合意からの離脱を表明するとともに、核合意に基づき解除していた対イラン経済制裁を再開する方針を明らかにした。合意残留を呼び掛ける英独仏の意向を振り切り、孤立の道を選んだ格好となる。イランはこれに対し、他の調印国が引き続き合意に協力するなら自国も核合意にとどまるとした上で、場合によっては核開発を再開すると示唆している。経済制裁は11月にも再び発動される見通しで、イランと取引のある第三国の企業にも影響が及ぶ可能性がある。
トランプ大統領はかねて、オバマ前政権が2015年1月、英国、ドイツ、フランス、ロシア、中国と共に結んだ対イラン核合意を「最悪の取引」と批判し、離脱の可能性を示唆していた。中でも、2025年にイランの核開発規制を緩和するいわゆる「サンセット条項」や、同国の中東各国への影響力行使および弾道ミサイル開発計画が黙認されていることを疑問視。これに対し英独仏は、必要なら合意内容の見直しに取り組むとして米国に合意残留を呼び掛けていた。
イランのロウハニ大統領はこの発表を受けてテレビ演説し、「イランは核合意の約束を果たしており、国際的義務を守っていないのは米国の方だ」と訴えた。同大統領は、「現時点から核合意はイランと他の5カ国の間のものとなる」と表明。向こう数週間でこれらの国と協議した上で、「イランが核合意に求めるものが達成できると判断すれば、合意にとどまる」と話した。その一方で、「原子力庁に無制限のウラン濃縮の開始に備えるよう指示した」と明らかにし、自国の目的が満たされない場合に「取るべき道は明白」としている。
英国、フランス、ドイツは米国の離脱決定について、遺憾の意を表明。欧州連合(EU)のモゲリーニ外交安全保障上級代表(外相)は、あくまで合意を維持すると決意を示した。また、ロシア外務省も「深く失望している」とコメントしている。一方、イランがなお核開発を進めているとして、合意の破棄を求めていたイスラエルのネタニヤフ首相は、トランプ大統領の決定を「全面的に支持する」と明言。イランと対立を深めているサウジアラビアも、米国の決断を「支持し歓迎する」としている。
米財務省はこの日、トランプ大統領の指示を受け、対イラン経済制裁再開の手続きを開始した。制裁再開の対象となるのは、イランの石油輸出、同国への航空機輸出、貴金属取引、イラン政府による米ドルの取得など。現在、これらの取引を行っている企業は、180日以内に取引を終了する必要があるとしている。フィナンシャルタイムズによると、これを受け9日には原油価格が1バレル当たり77ドル超に急騰し、2014年以降で最高水準に達した。
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