ハモンド財務相は13日、下院で春季財政報告を行い、経済・財政見通しと今後の財政計画を示した。今年の国内総生産(GDP)成長率見通しを1.5%に引き上げるとともに、2018/19年度以降は公的債務残高の対GDP比率が17年ぶりに低下傾向に転じると予想。英経済について「トンネルの先に明かりが見えてきた」との見方を示し、今後も債務削減に取り組む一方、今秋に発表する新年度予算で支出を増やす可能性を示唆した。
同相は、今後も公的債務や財政赤字の削減と公共支出のバランスを取り続けるとした上で、「今回の報告で示された財政状態の改善ぶりが秋まで続いていれば、向こう数年の財政支出を増やすことも可能」と話した。同相は今秋、新年度予算案と併せて、2020年以降に向けた財政計画を発表する方針。
これに対し、最大野党・労働党のマクドネル影の財務相は、「国民医療制度(NHS)は命綱となる資金の補給をさらに8カ月も待つことはできない」と批判。学校や緊急サービス、地方自治体の資金不足にも懸念を示した。
■グリーン小型商用車を減税対象に
ハモンド財務相は財政計画の一環として、一連の新政策を打ち出した。その一つとして、大気汚染物質の排出量が少ない小型商用車を対象とした減税措置を導入する方針を示している。環境関連では他に、使い捨てのプラスチック製品に新たに課税する可能性も示唆した。
同相はまた、イングランドの都市を対象に地域交通の改善計画を募り、総額8億4,000万ポンドの資金を提供する計画を明らかにした。ロンドンの住宅不足解消に向けては、追加で17億ポンドを拠出し、2万6,000戸の低価格住宅を供給するとしている。
このほか、電子商取引(eコマース)事業者からのVAT(付加価値税)の徴収方法を変更することにより、消費者がオンライン購入時に支払ったVATが確実に税収となるようにする。統一事業税については、次回の税率見直しを1年前倒しで2021年に行い、その後は3年ごとに見直しを行う。
■成長率見通しを引き上げ
財政方針の基軸となる経済予測を行う予算責任局(OBR)はこの日、世界経済の好調を背景に、2018年のGDP成長率見通しを昨年11月の予算発表時の1.4%から0.1ポイント上方修正した。ただ、2019年と2020年については共に1.3%にとどまるとの予想を維持している。
インフレ率については、昨年の2.7%から今年は2.4%に減速すると予想。原油や食料の価格上昇を背景に、昨年11月の予想からは0.1ポイント引き上げたものの、通貨ポンド安を背景とした物価高騰のピークは過ぎたとみている。2019年と2020年はそれぞれ1.8%、1.9%と、中銀イングランド銀行が目標とする2%を下回るとみている。実質賃金の上昇率は、向こう5年は年平均0.7%と低水準にとどまる見通し。
財政赤字額を示す公共部門純借入額(PSNB)の対GDP比率は、2017/18年度の2.2%から、2018/19年度は1.8%に低下し、向こう5年は縮小が続くとみている。公的債務残高は対GDP比で、2017/18年度の85.6%から、2018/19年度は85.5%に縮小し、こちらも向こう5年は低下し続けると予想する。
なお、今回のOBRの報告書では、英国が欧州連合(EU)離脱に際して支払うEU拠出金の清算額が414億ユーロで確定したことが明らかになっている。[環境ニュース]
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