欧州委員会は7日発表した冬季経済見通しの中で、今年のユーロ圏19カ国の実質域内総生産(GDP)が前年比2.3%拡大するとの見方を示した。昨年11月時点の予測から0.2ポイント上方修正した格好で、英国が欧州連合(EU)を離脱する来年も好調を維持するとみている。
欧州委はユーロ圏経済について、労働市場の改善や高水準の景況感に加え、世界経済と貿易が予想以上の成長を見せていることなどから、引き続き堅調に拡大すると分析。来年の成長率見通しは2%と、こちらも前回の1.9%から引き上げた。投資環境についても、EU域内外で需要が拡大し、緩和的な金融環境が続くとの見通しを示した。一方、下振れリスクとしては、ブレグジット交渉の先行き不透明感や地政学的リスク、保護主義の高まりを挙げている。
英国を除いたEU加盟27カ国のGDPは、2018年は2.5%、2019年は2.1%拡大すると予想。EU加盟28カ国のGDPは、今年は2.3%増、来年は2%増とし、それぞれ前回予想から0.2ポイント、0.1ポイント上方修正した。
インフレ率については、ユーロ圏は今年が1.5%と0.1ポイント引き上げた一方、来年は1.6%と従来予想を維持。EU28カ国は今年1.9%となった後、来年には1.8%に減速するとみる。
今年の成長率予測を国別に見ると、ドイツは2.3%と前回から0.2ポイント上方修正。フランスは2%、イタリアは1.5%、オランダは2.9%へとそれぞれ引き上げられた。スペインについては、北西部カタルーニャ自治州の独立問題を巡り政治的な混乱が続くものの、2.6%に上方修正している。ユーロ圏外の英国は、1.4%へと0.1ポイント引き上げたが、来年は1.1%に減速するとみる。欧州委は同国の2019年の予想について、EU27カ国との貿易関係が維持された場合を想定したものとしている。
欧州委のピエール・モスコビシ次期経済・財務・税制・関税担当委員は、「ユーロ圏経済は金融危機以来の成長を見せている」と評価。経済成長は10年前より均衡が取れており、構造改革や責任ある財政政策を受け、よりリスク耐性が付いていると分析した。その上で、こうした改革の機会はいつまでもあるわけではなく、経済・金融連合をさらに強化するには現段階で必要かつ野心的な決断を行う必要があると述べた。
なお、欧州委員会は今年から経済見通しの発表を従来の春季、秋季、冬季の3回から夏季を含めた4回に変更。うち夏季と冬季は中間発表としている。
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