英国と欧州連合(EU)は8日、英国のEU離脱条件で大筋合意した。アイルランドの国境問題と、英国のEU拠出金の清算、在英EU市民および在EU英国民の権利の主要3項目で交渉が成立した。12月14~15日のEU首脳会議(サミット)でこれが承認されれば、ブレグジット後の通商関係や、制度の激変を避けるための移行期間を巡る次段階の協議が開始されることになる。
合意文書では、英国のEU拠出金の具体的な清算額は明らかにされていないが、両者が合意した算出方法に基づくと約500億ポンドとなる見通し。英国在住のEU市民とEU在住の英国民は、子供や長期的なパートナーも含め定住権を保障される。
北アイルランドは英国の一部として共にEU関税同盟を脱退するが、アイルランドと英領北アイルランドの間で厳格な国境管理は行わず、新たな合意がない限り北アイルランドはEUの関税同盟と単一市場のルールに全面的に同調する。互いの国民が自由に移動できる共通旅行区域(CTA)も引き続き維持する。
アイルランドの国境問題を巡っては先に、英国側には北アイルランドが実質上、EU単一市場および関税同盟内にとどまることを受け入れる用意があるとの報道が流れた。これを受け、英与党・保守党に閣外協力する北アイルランドの民主統一党(DUP)のフォスター党首が激怒し、北アイルランドを英国の他の地域と別扱いにすることは受け入れられないと反論。いったんまとまりかけていた英・EU間の合意が妨げられた経緯がある。
欧州委員会のユンケル委員長は今回、「困難な交渉だったが、ようやく第一関門を突破した」とコメント。英国の離脱条件に関する協議で「十分な進展が得られた」との見解を示し、英国を除くEU加盟27カ国がサミットでこれを承認すれば、交渉の第2段階に入る準備があると述べた。
トゥスク欧州理事会議長(EU大統領)は、今回の合意に満足を示した上で、英国はEU単一市場と関税同盟を離脱した後の対EU関係について、より明確な考え方を示す必要があると指摘。また、英国に対し移行期間中はEU法を順守し、拠出金の支払いやEUの司法権を受け入れるよう求める考えを示した。
今回の合意を受け、英企業の間には安堵(あんど)感が広がる一方、さらなる明確さを求める声も強い。経営団体の英産業連盟(CBI)は、企業は何カ月も前から既にブレグジットに備えた計画を実行に移しているが、より多くの詳細が明確になれば、計画を停止する企業も出てくるとの見方を示した。英商工会議所(BCC)は、EU出身の従業員の権利が保障されることを歓迎した上で、「企業は規制や関税、人員採用、基準、税金にEU離脱が及ぼす影響を知りたがっている」と指摘。英業界団体のエンジニアリング事業者協会(EEF)は、「移行期間の設置により最終合意がまとまるまで従来通り事業を継続できることが分かるまでは、企業はあらゆる可能性に備える必要がある」としている。[EU規制][労務]
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