英国のメイ首相は4日、欧州連合(EU)離脱交渉を巡って、ブリュッセルでユンケル欧州委員長との会談に臨んだが、貿易交渉に進むための離脱条件での合意には至らなかったと明らかにした。難題となっている英領北アイルランドとアイルランドの国境問題が妨げとなった。BBC電子版などが伝えた。
メイ首相はユンケル委員長との共同記者会見で、「いくつかの論点」で意見の相違が残っていると説明。ユンケル委員長は、「最善の努力を尽くしたが、完全な合意に達することはできなかった」と述べた上で、協議は失敗したわけでなく、EU首脳会議(サミット)までに大幅な進展が遂げられると自信を示した。週内にも再び協議を開いた上で、EUサミットまでの妥結を目指す考えだ。
EUはかねて、拠出金の清算、英国在住のEU市民およびEU在住の英国民の権利、北アイルランド・アイルランド国境問題で合意しない限り、貿易交渉には進まない方針を示している。今回の会談は、12月14~15日にEUサミットを控える中、英国が最終的な譲歩案を示す締め切りと位置付けられていた。
欧州議会の緑の党のフィリッペ・ランバーツ党首はこの日、英政府と欧州委員会による共同合意文の草案に目を通したとして、英国が北アイルランド・アイルランド国境問題で譲歩する姿勢を示したと明らかにした。その後、英国側には、北アイルランドが実質上、EU単一市場および関税同盟内にとどまることを受け入れる用意があるとの報道が流れた。これを受けて、英与党・保守党に閣外協力する北アイルランドの民主統一党(DUP)のフォスター党首が激怒し、「北アイルランドを経済的・政治的に英国の他の地域と別扱いにするいかなる規制上の相違も受け入れない」との声明を発表。メイ首相は同党首との電話のため、ユンケル委員長との会談を一時中断したとされる。
なお、EU拠出金の清算額については英国側が最大500億ユーロを支払うよう条件を引き上げたとされるほか、EU市民の権利については6月、英国に5年以上住んだ人を対象に「定住資格」を与え、医療サービスや教育、社会福祉、年金などで英国民と同等の権利を認める方針を既に示している。[EU規制]
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