ハモンド英財務相は22日、2018/19年度の予算案を発表した。今年の成長率見通しを1.5%に大幅に引き下げる一方、欧州連合(EU)からの離脱に備え、既に費やした7億ポンドに加え、30億ポンドの予算を追加で計上している。
新年度の予算は歳出が8,090億ポンド、歳入が7,690億ポンド。ハモンド財務相は、EU離脱に向けた費用は今後も必要に応じて追加で計上するとした上で、「今回の予算はブレグジットだけに関わるものではない」と強調。英国の明るい未来に向け、財政均衡に向けた努力を続ける一方で、人材の育成やインフラ、住宅建設への投資を拡大する方針を示した。
これに対し、最大野党・労働党のコービン党首は「予算の真価は国民生活の現実に及ぼす影響によって評価される」とした上で、「今回の予算は人々の生活を改善せず、多くの国民が直面している苦難は今後も続くだろう」と非難している。
なお、政府は従来の秋季財政報告を今回から正式な予算案発表に格上げしており、2018年からはこれまで3月に発表されていた予算案を財政報告に変更する。
今回の予算案の骨子は以下の通り。
■個人所得税・賃金
最低課税限度額を現在の1万1,500ポンドから1万1,850ポンドに引き上げる。また、40%の高税率が課される限度額も4万5,000ポンドから4万6,350ポンドへと引き上げる。また、全国生活賃金を現行の1時間当たり7.5ポンドから来年4月に7.83ポンドへと引き上げる。
■企業支援
第5世代移動通信規格(5G)の携帯電話サービス向け通信網と、光ファイバー網、人工知能(AI)の開発支援に5億ポンドを投じるほか、電気自動車(EV)充電施設の増設などEVの普及促進に5億4,000万ポンドを振り向ける。また、研究開発(R&D)への投資予算を23億ポンド追加する。統一事業税率を従来の小売物価指数(RPI)よりも低い消費者物価指数(CPI)に連動させることにより、総額23億ポンド相当の減税を実施する。
■ディーゼル対策
2018年4月に予定されていた燃料税の増税を取りやめる一方、2018年4月以降に登録される基準を満たさないディーゼル新車については、車両税を従来より1段階引き上げる。また、ディーゼルの社用車の車両税の追加税率を3%から4%に引き上げ、これらによる税収の増加分を投じて2億2,000万ポンドの大気汚染対策基金を設置する。
■インフラ・運輸
タイの鉄鋼最大手サハウィリヤ・スチール・インダストリーズ(SSI)が2015年に閉鎖したイングランド北東部ティーズサイド(Teesside)近郊のレッドカー(Redcar)工場跡地の再開発に3億2,000万ポンドを投資する。都市部の運輸インフラに17億ポンドを投じるほか、3,000万ポンドを投資してファースト・グループ傘下のファースト・トランス・ペナイン・エクスプレスが運営する路線の携帯電話およびインターネットの接続を改善する。
■たばこ
たばこ製品の物品税を、RPIに2ポイントを加えた比率で引き上げる。巻きたばこについては、5月に導入された最低物品税を1,000本当たり268.63ポンドから280.15ポンドに引き上げる。
■住宅
一次住宅取得者を対象に、住宅価格のうち30万ポンド分までは印紙税の課税対象から控除する。
■保健医療
イングランドの国民医療制度(NHS)に28億ポンドを追加投資するほか、2022年までに病院設備に100億ポンドを投資する。
■成長率見通しを引き下げ
予算責任局(OBR)はこの日、今年の国内総生産(GDP)成長率見通しを前回予測の2%から1.5%に引き下げた。来年以降の見通しも下方修正し、2018年は1.4%、2019年と2020年は1.3%にとどまるとしている。一方、今年のインフレ率の見通しは2.7%と、前回から0.3ポイント上方修正。ただ、2018年は2.4%、2019年は1.9%に落ち着くとみる。
財政赤字額を示す公共部門純借入額(PSNB)は2016/17年度の457億ポンドから、2017/18年度は499億ポンドに拡大する見通し。ただ、2018/19年度は395億ポンド、2019/20年度は347億ポンドに縮小するとみている。
2017/18年度の公的債務残高は対GDP比で86.5%と、前年度の85.8%を大きく上回るものの、2018/19年度以降は低下に転じ、2022/23年度には79.1%に改善すると見込んでいる。[環境ニュース][労務]
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