ドイツのメルケル首相率いるキリスト教民主同盟・社会同盟(CDU・CSU)は、自由民主党(FDP)および緑の党との3党連立政権樹立に向けた交渉を開始した。税制や移民政策など意見の食い違う点も多く、合意には少なくとも年内いっぱいかかるとの見方が強い。ドイチェ・ウェレなどが伝えた。
CDU・CSUは9月25日の議会選挙で第1党の座を維持したものの、得票率は32.9%にとどまった。これまで連立相手だった第2党の社会民主党(SPD)は下野する意向を示しており、第3党に躍進したユーロ圏解体と反難民を訴える「ドイツのための選択肢(AfD)」との連立は各党とも否定している。このため、議席の過半数を確保するためには得票率10.6%のFDPおよび8.9%の緑の党との3党連立が必要となっている。ただ、自由市場と政府支出削減を信奉する中道右派のFDPと、政府規制や社会問題では左派に近い緑の党の隔たりは大きい。
最大の争点の1つは税制で、CDU・CSUとFDPが最大300億ユーロの減税を支持しているのに対し、緑の党は富裕層の増税を求めている。一方、緑の党が求めるインフラ・環境支出の増大には残る2党が懸念を示す。移民政策を巡っては、CDU・CSUとFDPが移民数制限を支持するのに対し、緑の党は難民の家族呼び寄せを認めるなどより寛大な政策を求めている。一方、欧州連合(EU)との関係については、各党とも親EU派ながら、FDPはギリシャのユーロ圏脱退を支持するなど財政基準を満たさない国に強硬姿勢を示している。
こうした中、緑の党は影響力の確保に向け、副首相を2人に増やし、FDPと同党から1人ずつ任命するよう要求している。
ただ、各党間には歩み寄りの姿勢も見られる。FDPのクリスティアン・レントナー党首は23日付南ドイツ新聞のインタビューで、「米アップルなどへの増税はあり得る」と発言。多国籍企業の租税回避を問題視する緑の党のジェム・オズデミル党首はこれを歓迎した。また移民政策では、国内経済を支えるため、一定数の移民を奨励する移民法の成立が必要との点で3党の意見がまとまりつつある。
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