欧州連合(EU)の加盟27カ国(英国を除く)は20日の首脳会議(サミット)で、英国のEU離脱後に向けた対英貿易交渉の開始決定を12月の次回サミットに先送りすることを正式に決めた。英国のEU拠出金の清算額などを巡る交渉に進展が見られないため。ただ、これらの問題が12月までに決着すれば、次回サミットでブレグジット後の対英関係や制度の激変を避けるための移行期間の枠組みに関する指針を打ち出す方針で、加盟各国に内部準備を開始するよう促している。
英国のメイ首相は今回のサミットで貿易交渉にゴーサインが出されることを望んでいたが、EU側は5回の対英交渉の結果、貿易交渉の前段となる拠出金やEU市民の権利、英・アイルランド間の国境問題を巡る交渉が十分進展していないと判断した。特に拠出金の清算額を巡っては、EUが600億ユーロの支払いを求める一方、英国はかねて200億ユーロを提示し、最終的な金額は貿易交渉の過程で決定する意向を示しており、こう着状態が続いている。
メイ首相はこの前夜、EU加盟27カ国の首脳を前に演説し、貿易交渉に移行する「明白かつ切迫した必要性がある」と訴え、各国首脳に理解を求めていた。金額面での妥協案は提示しなかったものの、譲歩の余地があることも示唆したもようだ。
トゥスク欧州理事会議長(EU大統領)はサミット後の記者会見で、「EUと英国の交渉が行き詰っているとの報道は、誇張されている印象がある」とコメント。「交渉が全く進展していないわけではない」と話した。また、ドイツのメルケル首相も「自分が見る限り、交渉が成功しないと考える理由はない」とコメントしている。
産業界では、貿易協定がまとまらないまま英国が離脱するハードブレグジットへの懸念が強まっている。英金融業界団体ザ・シティーUKは先に、移行期間の設置について遅くとも2018年3月末までに合意がまとまらなければ、企業は事業移転などのリスク対策を実行に移すと警告している。[EU規制]
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