メイ首相は19日、欧州連合(EU)離脱後のEU市民の在留資格の申請手続きをできる限り簡素化する方針を明らかにした。EU首脳会議(サミット)を翌日に控える中、在英EU市民への公開書簡として発表したもので、離脱交渉の行き詰まりを打開する狙いがある。
同首相は書簡の中で、現在、英国在留資格を持つEU市民はブレグジット後もその資格を保持できると明言。また「将来的に在留資格を申請する人向けに簡素化したデジタル手続きを策定する」として、EU市民代表者や技術専門家、法務専門家から成るグループと協力してプロセスを構築すると述べた。コストも最小限に抑える方針で、英国民のパスポート申請費用と同等にするとしている。これまで英国に居住するEU市民の永住権申請は、極めて煩雑で官僚主義的との批判が出ていた。
その上で、EU内に居住する英国人も同様な扱いを受けることを期待すると表明。交渉ではEU側にも柔軟性と創造力が求められると述べ、「市民の権利に関する協議は数週間以内に決着できる自信がある」と話した。
20日のEUサミットでは、英国を除く27カ国が離脱交渉の進捗(しんちょく)状況を評価するが、英国との将来的な貿易協定の協議に進むには不十分との結論を下すとみられている。トゥスク欧州理事会議長(EU大統領)は、今回の首脳会議では飛躍的な進展はないものの、12月のEUサミットまでには進展がある可能性を示している。
なお19日、ブレグジットを強く支持する与党・保守党と最大野党・労働党の議員や産業界の代表者はメイ首相に公開書簡を送付。EU側が態度を軟化させない場合は、2019年3月のEU離脱の日から世界貿易機関(WTO)のルールを適用する前提で作業を進めることを正式に宣言すべきだと主張している。
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。