英国の欧州連合(EU)離脱を巡る両者間の第5回交渉が12日に終了した。欧州委員会の首席交渉官を務めるミシェル・バルニエ氏はこの日開かれた会見で「大きな進展はなかった」とコメント。特に英国のEU拠出金の清算問題については「交渉が行き詰まっている」と述べ、貿易交渉に移行するのは時期尚早との判断を示している。
EUはかねて、英国在住のEU市民の権利や英国のEU拠出金、英・アイルランド間の国境を巡る交渉に進展が見られない限り、貿易交渉には着手しない方針を示している。バルニエ氏はメイ英首相がイタリアのフィレンツェで行ったEU離脱に関する演説により、交渉に弾みがつき、今回の交渉は建設的に進められたものの、大きく進展はしなかったと話している。
拠出金については、「メイ首相はEU加盟国として約束したことは守ると確約しているが、英国はまだその約束内容を明確化できていない」と説明。この結果、今回はこの点について協議が行われなかったとしている。EU市民の権利保護については、欧州司法裁判所の役割や家族の呼び寄せ、出身国へ戻った後の社会福祉の継続をめぐる交渉が続いている。また、英・アイルランド間の国境については、互いの国民が自由に移動できる共通旅行区域(CTA)や北アイルランド紛争の終結と和平実現に向けて結ばれたベルファスト合意の維持に向け一定の進展があったものの、アイルランドと北アイルランドの関係にブレグジットが及ぼす影響の全体像を把握するにはまだ時間がかかるとしている。
バルニエ氏はこの結果を踏まえ、「次回のEU首脳会議(サミット)で将来の英・EU関係をめぐる交渉開始を決めるよう推奨することはできない」と結論付けた。ただ、政治的意志があれば向こう2カ月に確固たる進展をみる可能性はまだあるとし、年内にさらに数回にわたり交渉を行う方針を示した。これに対し、英国のデービスEU離脱相は、「EU加盟各国が19日からのサミットでこれまでの進展を認識し、メイ首相の演説の精神にのっとり一歩を踏み出すことを期待する」と述べている。
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