英政府と欧州委員会は11日、英国の欧州連合(EU)離脱に伴う世界貿易機関(WTO)との取り決めの変更方針を説明する共同書簡を、他のWTO加盟国に宛てて送付した。農産物などの低関税輸入量の割り当てをEUと英国で分割する方針を打ち出すと共に、ブレグジットによる混乱を最小限に抑えると強調している。
EUはWTOのルールに基づき、域外諸国から一定量の食肉や乳製品などを低い関税率で輸入している。EUと英国は先に、ブレグジット後もこの割り当ての総量は現行水準に保ち、EUと英国の間で消費量に応じてこれを分割することで合意しており、今回の書簡はこれを説明するものとなっている。また、WTOルールで認められた農家への補助金の総額についても、EUと英国で分割するとしている。
書簡は、「EUと英国は、英国のEU離脱によって必要となるWTO内での調整に、協力的かつ透明な姿勢で取り組む」とした上で、「英国のEU離脱に伴う貿易への支障を最小限に食い止めるべく努力する」と強調している。
ただ、輸入割当量をEUと英国で単純に分割する手法を巡っては、既に一部のWTO加盟国が反対している。例えばオーストラリアやニュージーランドは、羊肉の対EU輸出量の大半が英国向けのため、ブレグジット後も現行水準の輸出量を維持できるよう、EUと英国の割当量の合計に余裕を持たせることを求めている。このほか、米国やカナダも不利になるとして反発しているが、EUと英国は域内・国内の農家保護に向け輸入量は最小限に抑えたい意向で、攻防戦が予想される。
フィナンシャルタイムズによると、割当量の分割比率は過去3年の消費パターンに基づいて算出する計画。ただ、EU単一市場内はモノの移動が自由なだけに、最終的な英国の消費量の詳細データは乏しいのが現状で、実務面でも困難が伴う見込みだ。[EU規制]
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