英政府は9日夕、欧州連合(EU)と合意のないまま離脱する場合を想定した関税手続きの方針を示した。世界貿易機関(WTO)の加盟国としての義務に沿って独自の関税率や関税割当、物品の分類などを定めるもので、2019年3月のEU離脱直後から適用できるように年内にも法案を準備する。
メイ首相は議会でこの提案について、「英国が独立した貿易国として行動し革新的な関税制度を確立する法規を準備するもの」と説明。政府は交渉の成功を望んでおり期待しているものの、あらゆる結果に備えておく必要があると表明した。政府はこれまで、合意なしの離脱に対する備えがないとの批判を受けていた。
提案は、貿易政策の原則を示した文書と関税制度の方針を示した文書から成る。合意なしの離脱に備えた緊急時の対応策として関税制度を確立し、輸入品には独自の関税率や輸入付加価値税(VAT)を課すほか、一部物品の輸出入には事業者にライセンスの取得を義務付ける。EUとの貿易でも税関検査や輸出申告書の提出などが必要になる。独自の関税割当も定め、引き続き発展途上国を支援するため特恵関税制度を設ける。さらに、EUが域外の各国と結んでいる既存の貿易協定を導入するため国内法を整備するとともに、EU離脱後に各国と新たな自由貿易協定(FTA)の交渉に入れるように新たな法規を定める。
政府は、これまで貿易相手がEU域内国だけだった企業には初めて関税手続きが必要になると警告している。ただし、こうした事態の影響を最小限に抑え英国とEUの貿易をできるだけ摩擦のないものにするための方法を検討していると説明。また、新たな関税制度を受けて英領北アイルランドとアイルランドの間に国境管理が必要になる事態は回避するとしている。
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