英政府は23日、欧州連合(EU)離脱後の司法権の管轄を巡る方針説明書を公表した。離脱により欧州司法裁判所の直接的管轄から脱却することを強調するとともに、英国とEUとの紛争については新たに紛争解決のメカニズムを設けることを打ち出した。ただし、「直接的」と表現したことで、間接的な管轄が残るのではないかとの見方も出ている。
同文書は、離脱後も移行期間については欧州司法裁の管轄が維持される可能性を示したほか、ブレグジット後は英国内に居住するEU市民の権利は英国法の管轄となることを明示。英国とEUとの紛争解決については、欧州司法裁が第三国との紛争解決に権限を持つことは前例がなく、権限を与えることは不公平で中立性がなくなるとしている。
メイ首相は、「議会が独自の法規を制定し、英国の裁判官が法解釈を行い、英最高裁が最終的な裁定を行える」として、法の支配を取り戻すことを強調した。一方、ラアブ司法担当閣外相は、離脱後に英国とEUの判例がかい離するため双方が互いの判例を注視することになり、英国がEUと貿易や市民の権利で新たな取り決めを策定する場合には欧州司法裁の権限が及ぶと説明。ただし紛争解決のメカニズムは欧州司法裁に似通ったものではなく、自由貿易協定などでEUが第三国との間で設けている手続きが基になるという。
この文書に対して、一部の法律家からは政府の方針では、離脱後も欧州司法裁は引き続き英国に影響を与える法規を制定する役割を持つと指摘。その例として、製品のEUに対する摩擦のない自由な輸出を望めば、EUが定めて欧州司法裁が監督する規格を順守する必要があることを挙げている。
また最大野党の労働党は、「首相が欧州司法裁や類似の機関は今後いかなる役割も果たすことはないとの空論を主張したことが、交渉妥結を妨げるリスクがある」と批判。野党の自由民主党も「メイ首相の譲れない一線が日ごとにあいまいになっている」と指摘している。[EU規制]
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