英政府は15日、欧州連合(EU)離脱後の英・EU間の関税のあり方について2つの案を提示した。英・EU間の既存の取り決めを一部流用する案と、新関税パートナーシップを結ぶ案で、いずれも通関手続きなどの負担増を最大限に緩和する狙いとしている。加えて、EU離脱後の急激な変化を避けるため、移行期間を設置することも正式に提案した。
政府は「新関税システムは、EUおよび世界の他の国々との貿易拡大を促すとともに、手続きの負担や遅延を最大限に緩和するものでなければならない」とした上で、これに向け2つの選択肢を提示。1つは「高度に効率化された関税取り決め」と称する案で、既存の関税取り決めの一部を継続しながら新たな措置も導入し、テクノロジーを利用して通関手続きを効率化するもの。もう1つは「新関税パートナーシップ」と称する案で、EU域外からの輸入品の基準にEUの要件を反映することにより、英・EU間の通関手続き自体を不要にするものだ。ただ、後者については「前例がなく、実施が困難な可能性もある」と認めている。
その上で、いずれの場合も新たな取り決めを実施する前に、一定の移行期間を設けることが双方のためになると強調。EU離脱後も期間限定で「EU関税同盟と緊密な連携を取る」ことを提案した。移行措置を巡っては、ハモンド財務相とフォックス国際貿易相が13日付サンデーテレグラフに共同で寄稿し、その必要性を訴えたばかりだった。
デービスEU離脱相はこの提案書について「英国はEUの最大の貿易相手国であり、未来の関係について合意に至ることは双方の利益となる」とコメント。「英国の交渉上の立場は強く、英・EU双方の企業にとって好ましい結果を得る自信がある」と話している。一方、EUは英国の提案を「慎重に」検討するとした上で、まずは英国のEU拠出金の清算額を確定する必要があるとの見解をあらためて示した。また、ブレグジット交渉で欧州議会の首席交渉官を務めるフェルホフスタット氏は「関税同盟に身を置きながら同時に離脱し、“目に見えない国境”を実現するなど夢物語だ」と批判している。
英政府は今後、これらの案について産業界と協議した上で「関税白書」をまとめ、今秋中に関税法案を提出する計画。
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