与党キリスト教民主同盟・社会同盟(CDU・CSU)を率いるメルケル首相は12日、9月24日に実施される総選挙に向けた選挙活動を開始した。4期目の続投を目指し、西部ノルトライン・ウェストファーレン州の産業都市ドルトムントで行われた選挙演説では、ディーゼル車の排ガス不正問題に揺れる国内自動車産業に矛先を向け、雇用維持と信頼回復に向けイノベーションを進めるよう求めた。ロイター通信が伝えた。
同首相は「自動車産業の大部分が、信じられないほどの信頼をギャンブルで失った」と指摘し、「この信頼を取り戻すことは自動車産業にしかできない」と強調。さらに、「自動車産業とはすなわち企業幹部のことだ」と付け加えると、拍手喝さいを浴びた。その上で、「企業だけではイノベーションが実現できない場合には、政府が後押しをする」との姿勢を示している。
メルケル首相が就任した2005年以降、ドイツ経済は堅調に伸び続け、失業率は記録的低水準にあり、同氏の支持率は他の首相候補を大きく引き離している。ただ、グローバル化の進展に伴い貧富の差が拡大し、低賃金層の間では不満が高まっている。自動車産業は80万人を雇用するドイツ最大の輸出産業でもあるだけに、自動車大手フォルクスワーゲン(VW)の排ガス不正に端を発した同産業の危機は、こうした層の困窮と不平等感を加速させており、選挙戦ではこの問題が大きな争点となっている。
政府は先に、地方自治体や自動車産業と全国ディーゼル会議の初会合を開き、国内のディーゼル車530万台を対象にメーカーの費用負担で大気汚染物質の排出量を減らすためのソフトウエア修正を施すことで合意。一部都市で検討されているディーゼル車締め出しの回避に向け先手を打った。政府広報官によると、全国ディーゼル会議の2回目の会合も予定されているが、日にちは明らかにされていない。[環境ニュース][労務]
※本コメント機能はFacebook Ireland Limitedによって提供されており、この機能によって生じた損害に対して株式会社NNAは一切の責任を負いません。