英国で最低労働時間を保証しない「ゼロアワー」契約で働く人が、過去最高水準に達している。ただ、増加ペースはピークを過ぎ、鈍化傾向がみられる。シンクタンクのレゾリューション基金(Resolution Foundation)が3日、政府統計局(ONS)のデータを元にまとめた分析結果を明らかにした。
政府統計局(ONS)によると、2016年第4四半期(10~12月)のゼロアワー契約者は約91万人に達し、前年同期から13%増加した。2年前と比べると30%伸びている。レゾリューション基金はこの増加傾向が続いた場合、100万人の大台突破は近いとみる。
一方で2016年第2四半期と比べると、増加率はわずか0.8%にとどまる。また、季節調整前の数値だが、2016年下半期(6~12月)のゼロアワー契約者の増加率(0.8%)が同期の雇用の伸び率を若干下回っている上、2015年下半期のゼロアワー契約者の増加率が7.7%だったことを考慮すると、英国の欧州連合(EU)離脱が決まった後、ゼロアワー契約の増加ペースは減速していると結論付けた。
レゾリューション基金は減速傾向の背景には、雇用の伸び率自体が緩やかになったこと、ゼロアワー契約の認知度が高まったことで新規申告者が減ったこと、雇用率が過去最高水準で推移する中、ブレグジット後には労働者不足に陥る可能性が懸念されていることがあると分析している。また企業側が、ゼロアワー契約絡みで評価を落とすことを回避している面もあるとみられる。
ゼロアワー契約は決まった労働時間がなく、仕事があるときだけ働く雇用形態。収入が安定せず、有給休暇や病気休暇も認められない。ゼロアワー契約は商店、ホテル、介護施設などに多い。レゾリューション基金によると、ゼロアワー契約者の平均労働時間は週21時間で、同様の業務に従事する被雇用者と比べ、年間1,000ポンドほど収入が少ないという。[労務]
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